2015年10月17日土曜日

ビースト・オブ・ノー・ネーション

ビースト・オブ・ノー・ネーション
Beasts of No Nation
2015年 アメリカ 103分
監督:キャリー・ジョージ・フクナガ

内戦中のアフリカ某国で政変が起こり、新政権が中立地帯を廃止して住民に立ち退きを要求するので、それまでそこで平和に暮らしていた人々は激しく困惑しながら女子供を脱出させて、父祖伝来の土地を守るために男は残る、という決定をするが、母親と一緒に脱出するはずだった幼いアグーは満杯のタクシーに乗車を拒まれて残ることになり、残った人々は政府軍に捕えられて反政府軍NDFのスパイであると決めつけられ、父と兄を殺されたアグーは森に逃れ、そこでNDFの指揮官に拾われて兵士としての訓練を受け、多数の少年兵とともに敵を殺害しながら首都を目指して進軍するが、内戦終結後の国際関係を気にし始めたNDF指導部とアグーたちの指揮官のあいだで思惑が分かれ、アグーたちの指揮官はNDFの主流から離れて独自の戦いを開始する。 
製作、監督、脚本は『闇の列車、光の旅』『ジェーン・エア』のキャリー・ジョージ・フクナガ。アフリカ内戦における少年兵というと『ジョニー・マッド・ドッグ』を思い出すが、『ビースト・オブ・ノー・ネーション』は話を少年兵というところにとどめずに、戦場にいながら最後まで正気を残した少年の目を通して救いのない内戦の実態を描いていく。少年兵という存在がただそれだけでむごいのではなく、少年兵を作り出す状況がまず醜悪なのである。少年アグーを演じたエイブラハム・アッターがすごい。独特の色彩感覚と空間処理、瞬間に見える幻想的な光景が絶望と諦観を際立たせて、見ごたえがある。NETFLIXオリジナルの長編作品で、ロケはガーナでおこなわれた模様で、劇中に登場した車両(6×6ピラーニャ、ラーテルなど)からするとガーナ軍が協力している。
Tetsuya Sato