2015年5月11日月曜日

Plan-B/ 針

S5-E13
 夕陽を浴びて流れる川の上をなにかの群れが飛んでいた。一つのかたまりになって一気に空へ駆け上り、舞い降りてきて流れるように川原を横切り、川を見下ろす土手を越えて住宅地の上に弧を描いた。一つひとつは小さかった。鳥のように見えたが、それは翼を持っていなかった。魚のようにも見えたが、トビウオのような鰭を持っていなかった。針のような形だった。それがどのような方法で飛んでいるのか、生き物なのか、それとも違うものなのか、多くのひとが空を見上げて、その正体を明かそうとした。一つが群れから離れて古い板塀にぶつかった。板をつらぬいて塀を抜けると群れに合流して舞い上がった。それは町の上空をしばらく飛んで、黄昏の光のなかを西のほうへ消えていった。

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