2015年12月31日木曜日

トポス(63) ヒュン、魔法玉を手に入れる。

(63)
 ヒュンとネロエは路地に入って魔法玉の売人を探した。路地の突き当たりにいかがわしい気配が漂う建物があった。入り口に武装した用心棒が二人立っていた。ネロエが呪文を唱えて一人を飛ばし、代わりに予言者を呼び寄せた。予言者が聞けっと叫んでいるあいだにヒュンが残った一人を剣で殺した。予言者の胸にも一突きを加えて、二人は建物に入っていった。
 そこは魔法玉工場だった。ハンマーを握った男たちが小鬼の頭を割っていた。白いマスクをつけた女たちが小鬼のからだを刻んでいた。鍋をかきまわしている女がいた。すり鉢で何かをすり潰している女もいた。奥のほうには白衣の男たちがいた。防塵メガネとマスクで顔を覆って、小さなスプーンで粉と粉とを混ぜていた。
「ああ」とネロエが息をもらした。唇を噛み締め、髪をなびかせて前に進んだ。「邪悪な黒い力よ」ネロエが叫んだ。「おまえたちの思うとおりにはさせません」
 ネロエが呪文を唱え始めた。呪文を唱えながら手を動かすとハンマーを握った男たちが、マスクをつけた女たちが、そして白衣の男たちが、次々に消えて善良な市民に入れ替わった。タバコを口にくわえたスーツの男が、おしゃぶりを口にくわえた赤ん坊が、シャワーキャップをつけた裸の女が、ただうろたえたまま、恐怖を感じて悲鳴を上げた。ヒュンは在庫棚に近寄って、山ほどの魔法玉を手に入れた。

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