2015年12月7日月曜日

トポス(43) ヒュン、森でエルフと出会う。

(43)
 ヒュンは山を下って森に入った。木々が葉を重ねて陽射しをさえぎる暗い森に入っていった。
「尾けられている」とヒュンが言った。
 クロエがショットガンを腰で構えた。
 キュンが羊飼いの杖を両手に握った。
 黒々と影をまとう木々をまわって、一団のエルフが弓を構えて現われた。矢を引き絞ってヒュンを狙った。
「武器を捨てろ」
 エルフの一人が叫ぶのと同時にクロエがショットガンの引き金を引いた。叫んだエルフの顔が吹っ飛んだ。数本の矢がヒュンの足もとに打ち込まれた。クロエがまたショットガンの引き金を引いた。キュンが杖で打ちかかり、ヒュンが剣で斬りかかった。エルフが最後の一人になったとき、ヒュンが腕を上げてクロエをとめた。いきなり流れを断ち切られたので、クロエの心は晴れなかった。そのあいだにキュンが杖を振り上げた。エルフが放った矢をかわして、エルフの頭を粉砕した。ヒュンは強い怒りを感じた。怒りのままに拳を握ってキュンの頬に叩きつけた。キュンが叫んだ。
「なんだってんだ」
「一人は残しとけ」
 ヒュンはそう言ってエルフの死体を探り始めた。財布や魔法玉を見つけるとそれを自分の懐にしまった。
「独り占めかよ?」
 キュンがそう言うとヒュンは再び拳を握ってキュンの頬に叩きつけた。キュンが叫んだ。
「なんだってんだ」
 キュンはもう一度拳を握ってキュンの頬に叩きつけた。
「俺がボスなんだ」

Copyright c2015 Tetsuya Sato All rights reserved.