2013年1月13日日曜日

キング・オブ・バイオレンス

キング・オブ・バイオレンス
King of the Ants
2003年 アメリカ 94分
監督:スチュアート・ゴードン

日雇いでペンキ塗りをしている若者が工事現場で出会った電気技師から夢はないのかと質問され、映画のなかの私立探偵と答えると、間もなくその電気技師から電話があって建設会社の社長を紹介され、その社長から尾行の仕事を与えられる。車がないので自転車をこいで標的を追いかけ、ポラロイドカメラで写真を撮り、どうにか尾行の仕事をこなして報告すると、建設会社の社長が酔って現われ、今度は標的の殺害を依頼する。若者はさまざまな条件を上げ、結局13000ドルで話がつき、標的の夫人が働く慈善団体の職員を装って標的を訪ね、置物で殴り、植木鉢を叩きつけ、冷蔵庫を倒して押し潰す。そしてファイルを見つけ出して自宅に戻り、電気技師から連絡を受けて動物園を訪れる。電気技師は若者に町を離れるように要求し、若者が報酬を求めると蟻んこ野郎と罵って首を絞め、若者の人格を貶める。一方、若者は町から出ることを拒み、殺害の現場でファイルを見つけたことを口に出し、そのファイルを友人に預けて自分の身に何かがあったら公表されることになっていると宣言する。そこで建設会社の社長は若者をさらって郊外の農場に監禁し、監禁された若者は壁に貼ってあったピンナップガールの写真で自慰にふけり、殺した男の夫人との関係を妄想する。社長一味は若者の脅しをまったく意に介さずに若者を縛って頭をゴルフクラブで殴り続け、毎日のように殴られるので若者はこぶだらけになって正気を失い、自分から頭を差し出すようになり、殺した男の幻影が現われ、そうこうするうちに機会を捉えて反撃に出て、そこへ現われた友人に助けられて農場から脱出を果たすが、言っていることがすでにおかしいので見捨てられて異様な風体のまま町を歩き、慈善団体に救われる。もちろんそこには殺した男の夫人がいて、若者はそこで傷を癒し、行くあてがないということで家に招かれ、冷蔵庫が新しくなっていることを確認し、夫人の娘と親しくなり、夫人とも親しくなるが、ファイルをうかつな場所に隠したせいで正体を知られ、再び農場を訪れて大掃除に取り掛かる。
ふつうの知能とふつうの欲望とふつうの善良さを備えた若者がどれを捨てるというのでもなく、ただ状況に巻き込まれて死体を転がしていくプロットはなかなかに面白い。身勝手ではあっても基本的には善人なので、自分がじわじわと殺している相手をふつうにいたわったりするのである。スチュアート・ゴードンとしては珍しくハリウッドで撮影され、手持ちカメラを多用している。上記のような内容だが、スチュアート・ゴードンの映画なのでやっぱりぬとぬとした物が出現する。暴力描写はかなり衝撃的で、ゴルフクラブで打たれるシーンには目を背けた。けちな建設会社の社長がダニエル・ボールドウィン、その子分の役でヴァーノン・ウェルズが顔を出している。 



Tetsuya Sato