2012年2月14日火曜日

ビロウ

ビロウ(2002)
Below
監督:デヴィッド・トゥーヒー


1943年の大西洋。カタリナ飛行艇が洋上を漂う遭難者を発見し、現場へ急行したガトー/バラオ級潜水艦が男二人女一人を収容する。沈んだのはイギリスの病院船で、夜間にUボートの雷撃を受けたらしい。救出に現われた潜水艦は艦長代行が指揮していて、艦長にはどうも何かが起こったらしい。潜水艦はドイツの駆逐艦に遭遇して潜航し、攻撃から逃れて音を殺していると、なぜかいきなりレコード・プレイヤーが動き出す。探信音が鳴り響き、爆雷の雨が降り注ぐ。だが恐ろしいのは爆雷攻撃だけではない。艦長室のクロゼットには怪しい気配が、壁には怪しい人影が、よどんだ空気は幻影を生み、舵は人間の意思に逆らい、火災は無辜の乗組員を焼き払い、そしてついに潜水艦は暴走を開始する、といういまどきにしては恐ろしく真っ正直な「潜水艦の怪談」で、監督は『アライバル』、『ピッチ・ブラック』とSF路線を進んできたデビッド・トゥーヒー(貨物船の船長役でご本人が登場する)。冒頭、飛行艇の世にも美しい俯瞰ショットや潜舵を伸ばして潜行していく潜水艦といった丁寧なメカ描写がうれしいし、海底で遭遇するエイの群れという異世界的な描写も心楽しい。いつものことで話の作りに破綻はないし、例によってやるべきことはきっちりやっているが、演出に今ひとつ加減がないだけに雰囲気が二の次になっていて、怖さの点では盛り上がりを欠く。そのつもりでディテールを楽しんだ方が正解かもしれない。


Tetsuya Sato