2012年11月7日水曜日

ロビン・フッド

ロビン・フッド
Robin Hood
2010年 アメリカ 140分
監督:リドリー・スコット

十字軍遠征から帰還の途中、リチャード獅子心王が城攻めの戦闘で戦死し、王冠を運ぶ騎士ロクスリーの一行はフランス王フィリップと気脈を通じたゴドフリーの待ち伏せにあい、王冠はそこへ通りかかった弓兵ロビン・ロングストライドが預かることになり、ロビン・ロングストライドはロクスリーを名乗ってロンドンを訪れてリチャード獅子心王の死を知らせ、アリエノール・ダキテーヌの手によって王弟ジョンに王冠が与えられ、そこまででもすでに絵に描いたように暗愚であることがはっきりとしているジョン王はさっそく存在価値を発揮して増税を宣言すると親友ゴドフリーに軍勢を与えて諸侯を脅し、ロビン・ロングストライドはロクスリーとの約束を守ってノッティンガムを訪れ、ロクスリーの剣をロクスリーの父ウォルター・ロクスリーの手に渡し、ウォルター・ロクスリーは領地を守るために息子の死の隠蔽を望み、ウォルター・ロクスリーの希望を受け入れたロビン・ロングストライドはロクスリーの妻マリアンの顰蹙を買い、一方ゴドフリーはフィリップ王が派遣したフランス兵を配下にしたがえ、各地で暴虐をふるって反乱を誘い、反発した諸侯がジョン王に対して決起すると、それを機と見たフランス王の軍勢がイングランド侵攻にとりかかり、事実を知ったジョン王は諸侯に対して忠誠を要求するが、要求するだけで譲歩しないので諸侯はただ反発し、そこへ出生の秘密をウォルター・ロクスリーから知らされたロビン・ロングストライドが現われて王と諸侯の前で演説をして、イングランドを危機から救うために軍勢をまとめて上陸してきたフランス軍と対決する。
つまりロビン・フッドがシャーウッドの森にひそむことになる前の状況を扱っていて、ジョン王、代官、マリアン、タック修道士、さらにシャーウッドの盗賊たちと必要なキャラクターは一式登場するものの、やっていることは必ずしも「ロビン・フッド」ではない。どうやら「ロビン・フッド」そのものよりもやりたいことが別にあって、それは冒頭の攻城戦であり、クライマックスの英国本土上陸作戦であり、そうした場面をつなぐために「ロビン・フッド」のフレームが遠まわしに採用されているように見える。ではそれが悪いかというとそういうことはまったくなくて、つまり見ているこちらも「ロビン・フッド」に格別の関心があるわけではないし、いずれにしてもラッセル・クロウはつまるところラッセル・クロウにしか見えないということであれば、リドリー・スコットがデザインした戦闘シーンや再現された十二世紀に見ごたえがあればそれでいいということになり、そして見ごたえがある以上、まったくの話、文句はない。実際、戦闘シーンのディテールとシャープなショットの積み重ねは涙ものの仕上がりである。
ところでフランス軍のあのモダンな上陸用舟艇は実在したものなのか。あの形状で凌波性のある船を当時の技術で作るのは難しいのではあるまいか。隙間にまいはだを詰めてタールで固定すれば、とか考えてみたが、ちょっと怪しい。 





Tetsuya Sato