2012年11月6日火曜日

キングダム・オブ・ヘヴン

キングダム・オブ・ヘヴン
Kingdom of Heaven
2005年 アメリカ/スペイン/イギリス 145分
監督:リドリー・スコット

十二世紀末、エルサレム王国。病身のボードワン四世はサラディンとの条約を守って平和を保とうと試みていたが、その足元ではテンプル騎士団が武力挑発を繰り返している。やがてボードワン四世の死後、ギー・ド・リュジニャンが王位を継いでサラディンの軍勢に戦争をしかけ、ところがアホウなので見事に敗退して捕虜となり、騎士ゴドフリー殿の息子で鍛冶屋のバリアンがエルサレムの防備に励むことになるのである。
鍛冶屋のくせにむやみと強いバリアンがオルランド・ブルーム。あいかわらずエルフのまんまと言えばまんまだが、そこにリドリー・スコットが巧みにウェザリングをほどこしたので、それなりに見える。その父親のリーアム・ニーソンはつまりリーアム・ニーソンであったが、その脇にいた宗派のわからない修道騎士のデヴィッド・シューリスがなかなかにいい感じで、これが後半ほとんど姿を消してしまうのが少々寂しかった。ボードワン四世は仮面で顔を隠したエドワード・ノートン、その下でまっとうな家臣をしているのがジェレミー・アイアンズ、ほとんどひとりでいいとこ取り、本編最大の悪役ギー・ド・リュジニャンの子分でテンプル騎士団の騎士ルノーがこんな役ばっかりじゃないか、という感じのブレンダン・グリーソン、ということで役者は全体によい具合にまとまっていて、話はそれなりにテンポが速く、登場人物の立ち位置は善玉も悪玉も脇役も終始一貫しているので余計な逡巡をしている暇がなく、戦闘シーンは大迫力で、殺陣はそれなりに見栄えがする(このあたり、『グラディエーター』から遥かに進化している)し、攻城戦は感動もので、特に攻城塔のひっくり返り方には涙が出た。そして視覚的には信じられないくらいに豊饒な作品であり、つまり、ストーリーがどうこう、というよりも、そういうものが作りたかった、ということになるのではあるまいか。 




Tetsuya Sato