2016年1月6日水曜日

トポス(68) ピュンはさらに罠を仕掛ける。

(68)
 単純な方法は失敗が多い、とピュンは思った。十分すぎるほど先回りをして、時間をかけて罠を仕掛けた。まず道を動かして、道の先をむき出しになった大岩に向けた。もとの道筋が見えないように藪で隠して、それからペンキと刷毛を取り出すと冷たくて黒い岩肌にトンネルの入り口を描き始めた。本物と見分けがつかないほど上手に描いて、藪に隠れてヒュンを待った。ヒュンがトンネルに入ろうとして岩にぶつかったら、背後からナイフで襲ってヒュンを仕留めるつもりだった。ヒュンが来た。早足で道をやってきて、そのままトンネルに入っていった。ピュンは隠れ場所から立ち上がって、トンネルの入り口に近づいていった。首をかしげて中を覗いた。とたんにトラックが飛び出してきて、ピュンをタイヤで踏みしだいた。続いて貨物列車が飛び出してきて、ピュンを車輪で切り刻んだ。
 複雑な方法は失敗が多い、とピュンは思った。先回りをして落とし穴を掘り始めた。小さな穴ではヒュンがかからないかもしれないので、大きな穴を掘ることにした。道に大きな穴を掘って、一休みをして握り飯を食べていると握り飯の一つが転がりだして穴に落ちた。すると穴の底から、おむすびころりん、すっとんとん、と声が聞こえた。ためしにもう一つ落としてみると、穴の底からまたしても、おむすびころりん、すっとんとん、と声が聞こえた。ピュンが腰を上げて穴を覗くと、ネズミがピュンを見上げていた。ネズミは握り飯の礼がしたいと言ってピュンを呼び、大きな葛篭と小さな葛篭を並べて好きなほうを選ぶようにとピュンに言った。大きな葛篭をピュンは選んだ。穴の外に運び出して蓋を開けると爆発が起こってピュンを雲の上まで吹き飛ばした。

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