2014年1月7日火曜日

ウォッチメン

ウォッチメン
Watchmen
2008年 アメリカ 162分
監督:ザック・スナイダー

同名のグラフィックノベルのほぼ忠実な映画化。それなりの大部で、しかも時間的にも空間的にも錯綜した原作をほころびを見せずに映像化した手腕には正直、舌を巻いたが、それ以上に感心したのがオープニングで、半世紀近い時の流れを手際よくダイナミックに刻み込み、視覚的にきわめて面白いものに仕上げている。ここだけでも映像作品としては無条件に買いであろう。
とはいえ、数十億を救うために数百万を個人の判断で殺戮するという『フェイルセイフ』どころではない原作どおりの結末は、やはりどうにも気に入らない。このような発想自体が相当にグロテスクであるという意識が見えないし、見えないところに不健康さを感じるし、そもそもこれが必要な結末であったかどうかが疑わしい。前段と比べると話を明らかに広げすぎていて、バランスが崩れているように思えてならないのである。わたしとしては、あの七面倒なDr.マンハッタンも含めて、暗くよどんだ静かな場所に心地よく回収されてほしかった。 


Tetsuya Sato