2014年1月19日日曜日

ゼロ・アワー

ゼロ・アワー
La hora cero
2010年 ベネズエラ 99分
監督:ディエゴ・ベラスコ

1996年、公立病院の医師が賃上げを求めてストライキに入ったころ、パルカと名乗る貧民街出身の殺し屋が銃弾で傷を負った臨月の女性を抱えて貧民街から飛び出してきて仲間を連れて最寄りの公立病院に突入し、制止しようとした警備員をすばやく射殺すると抱えてきた女性の治療を医師に要求し、夜勤明けの医師が病院には手術施設がないことを説明すると、説明した医師を拉致して女性を抱えてタクシーを乗っ取って設備のある私立の病院を目指し、仲間に運転をまかせると車内で医師を手伝って女性の出産に立ち会い、たまたま遭遇した警察官に銃撃を加えながら目当ての私立病院にたどり着き、傷を負った女性と生まれたばかりの赤ん坊を抱え、バイクにまたがった仲間を引き連れて病院内へと乗り込んでいって警備員二名を射殺、その場にいた医師、看護師、患者その他を制圧、まず女性の手当てと赤ん坊の救命を要求し、手当てにかかった医師は輸血用の血液を求め、パルカはスクープを求めて現場に乗り込んできたレポーターとカメラマンを拉致するとテレビを通じて血液を要求し、同時に貧困階層に向けて医療の提供を申し出るので貧困層が病院に殺到してパルカは一躍英雄となり、そこに病院を囲む警官隊、指揮に乗り出してきた知事などの思惑がからみ、あいまにパルカが殺し屋になった経緯をパルカ自身が回想する。 
現代ベネズエラをすっきりと断ち切っていて、その断面の血まみれぶりがちょっとすごい。権力は横暴で格差は隠しようもなく、パルカとその一味も警官隊もとにかく引き金が軽くて人命が安い。
明確にジャーナリスティックな視点によってまとめられているせいもあって、そこがこちらの目にはある種の単純化がほどこされているように映るものの、映像はおおむねシャープで回想も含めて全体に短いカットで構成され、語り口の整合性を保ちながらテンションが最後まで持続する。パルカを演じたザパタ・666をはじめ、どの出演者もよい仕事をしていると思う。 


Tetsuya Sato