2013年9月27日金曜日

誰がため

誰がため
Flammen & Citronen
2008年 デンマーク/チェコ/ドイツ 136分
監督:オーレ・クリスチャン・マセン

1944年のコペンハーゲン。レジスタンスのフラメンは相棒のシトロンとともにレジスタンスの指導者アクセル・ヴィンターの命令にしたがってデンマーク人の対独協力者ばかりを次々に殺害していたが、本来であれば殺害対象とはならないはずのドイツ人ギルバートの暗殺を指示され、そのギルバートが警官に偽装したフラメンの正体を即座に見抜き、あれやこれやと説教を始めるとフラメンの心が揺れ動き、さらにヴィンターがフラメンの愛人ケティ・セルマーの殺害を指示すると今度はケティ・セルマーからヴィンターの正体を暴露され、ヴィンターがしたがっているというロンドンからの指令の存在を疑い、ヴィンターがストックホルムに逃亡するとフラメンの心はいよいよ疑いでいっぱいになり、自分たちが殺していたのはもしかしたらすべてが対独協力者ではなかったのではないかと考え始め、そこへ妻子に置き去りにされて孤独をかこち、そもそも自暴自棄であったようにも見える相棒のシトロンがフラメンの疑いを強引に打ち消し、事実上居直る形でなおも闘争を続けるためにゲシュタポの司令官ホフマンの暗殺を決意するが、至近距離にまで迫ったところで今度はホフマンにあれやこれやと説教をされてフラメンの心がまた揺れ動き、結局暗殺を果たせずにその場から逃げ、逆恨みのようなところからまた挑んでまた失敗し、三度目に挑戦したところでまたしくじり、それでとうとうドイツ側も本気になったのか、フラメンとシトロンはドイツ軍に追いつめられる。

『影の軍隊』などを見てもあきらかなようにレジスタンス活動というのはふつうに進めていても猜疑心のとりこになって仲間内で殺し合いを始めてしまうので、そこへ具体的に疑惑がからんでくるともうどうしてみようもないのであろう。それにしても変わったレジスタンスで、ゲシュタポがふつうに飲みにくるような店で集会を開いているし、話がこじれてくると、なぜか関係者全員でストックホルムに集まって、今度はそちらで集会を開く。被占領国の市民が中立国にふつうに出張できるのである。出演者の演技の水準がきわめて高く、演出は忍耐強く、落ち着きがある。フラメンを演じたトゥーレ・リントハート、シトロンを演じたマッツ・ミケルセンが実に印象的であった。

Tetsuya Sato