2013年2月28日木曜日

恋人よ帰れ!わが胸に

恋人よ帰れ!わが胸に
The Fortune Cookie
1966年 アメリカ 125分
監督:ビリー・ワイルダー

TVカメラマンのハリー・ヒンクルはフットボールの試合中継中に選手のブーン・ブーン・ジャクソンに激突され、脳震盪を起こして病院に送られる。見舞いのために病院に現われたハリー・ヒンクルの義兄(姉の夫)ウィリー・ギングリッチは評判の悪い弁護士で、ハリー・ヒンクルの負傷を脊髄損傷、部分麻痺に格上げしてフットボール・チーム、スタジアムなどを訴えて高額の損害賠償(オハイオ州最高額、当時)を得ようとただちにその場で決心する。そして気の進まないハリー・ヒンクルをこの詐欺行為に引きずり込み、心配してやってきたブーン・ブーン・ジャクソンをだまし、被告弁護団が送り込んできた医師団をだまし、被告弁護団が送り込んできた私立探偵とそのジェミニ計画の裏をかき、とにかく悪辣なことをいろいろとするのである。
善良なだけの男ハリー・ヒンクルがジャック・レモン、悪徳弁護士がウォルター・マッソー。ウォルター・マッソーの悪役ぶりが特に目立つ作品だが、思い出してみると、1964年のシドニー・ルメット版『未知への飛行』でもタカ派の軍事アナリストというかなり強烈な悪役をやっていたし、70年代には『突破口』の銀行強盗チャーリー・ヴァリック、80年代には『パイレーツ』のバーソロミュー・レッド船長という具合にふてぶてしくて口の減らない悪役をやっているわけで、悪役の多いひとなのかもしれない、と改めて思ってみたりする。本作では目つき面つきが貪欲な悪徳弁護士そのままという感じで、しかも決してただでは転ばないし、転ぶときにはまわりをできる限り道連れにしようとがんばっていた。これに比べるとジャック・レモンはやや印象が希薄だが、当人のせいというよりも役柄のせいであろう。ジャック・レモンの別れた女房役でジュディ・ウェストが登場し、この悪女ぶりもなかなかのもので、ニューヨークのアパートのシーンが面白い。映画自体の作りはやや渋めで、結果としてかなり痛みを背負う話になってくるので少し重たい。


Tetsuya Sato