2013年2月16日土曜日

七年目の浮気

七年目の浮気
The Seven Year Itch
1955年 アメリカ 104分
監督:ビリー・ワイルダー

マンハッタン島に住むインディアンが妻子を避暑に送り出し、自分たちは土地に残って漁に狩りにと精を出していた頃から五百年後、マンハッタン島に住む男たちは妻子を避暑に送り出し、漁に狩りにと精を出すべきところを、解放感に浮かれてよからぬほうへと傾いていく。出版社に勤めるリチャード・シャーマン(三十八歳)もまた妻子を避暑に送り出し、入れ替わりに同じ建物の真上の部屋に金髪美女が出現したことを知って理性を失い、しかも小心で平凡で、音響効果付きシネスコサイズの想像力の持ち主であったために、いちいち怖い考えに耽るのである。
かなりの部分が主人公リチャード・シャーマンのモノローグによって埋められているが、モノローグと見えるものは、かなりカリカチュアされているものの、中年男の頭のなかをそのまま反芻したようなしろものである。単細胞な空想場面も同様で、だから自分自身が中年の坂を転げ落ちていく状態であらためて見直すと、おかしい、というよりも、まあそういうものだ、という感想が先に立つ。リチャード・シャーマンに扮したトム・イーウェルはモノローグとのずれを感じさせない点でリアルな中年男であろう。マリリン・モンローはとにかく美しくて魅力的。気の利いた台詞は山ほどあるし、出演者はいずれも達者だが、どちらかと言えばマリリン・モンローを見せるために作られたような気配があって、そのせいでテンションが持続しない部分もある。カメラの視線にまで妙な煩悩が混じるのである。


Tetsuya Sato