2013年2月21日木曜日

ジャッジ・ドレッド

ジャッジ・ドレッド
Dredd
2012年 イギリス/アメリカ/インド/南アフリカ 95分
監督:ピート・トラヴィス

核戦争後のアメリカには汚染された荒野から塀によって隔てられたメガシティ・ワンという超巨大な都市があって、戦前の建物のあいだに超巨大な建築物がそそり立ち、おそらくは巨大すぎてまったく管理が行き届かないそういう建築物を根城に超凶悪な犯罪者が幅を利かせて治安を著しく悪化させているので、陪審員と判事と処刑人の仕事をまとめて引き受ける超強力な裁判官が犯罪者を追跡してその場で判決を下して処刑する、というようなことをしていると、その裁判官のなかでもベテランの一人ドレッドに新人の裁判官をテストするようにという指示が下り、そこへまた殺人事件が起こるので、ドレッドが新人をともなって事件の現場となった二百階建ての巨大なビルに出かけていくと、そこは超凶悪ぶりに輪をかけた『ママ』が率いるギャングの根城で、犯罪の証人を連行しようとしたドレッドと新人はビルに閉じ込められて『ママ』の手下たちの猛攻を浴びるので、例の音声入力インターフェースがついたインチキくさいピストルで反撃に出る。
状況は『ザ・レイド』にちょっと似ているけれど、こちらはもっぱら暴力沙汰に専念していて生き別れの兄弟なんか出てこない。監督は『バンテージ・ポイント』のピート・トラヴィス。決してうまいひとだとは思わないが、スタイルを作る技術は心得ている。ケープタウンとヨハネスブルグとCGで作り出されたメガシティの風景というのがモダンなリアリティを備えていて、服装や車や武器がほとんど現代のままで、それがどちらかと言えばどれもいくらか古びている、というのもそれらしい。主演のカール・アーバンは終始ヘルメットをかぶったままで、見えるのは無精ひげを生やした口元だけ、というヒーローらしからぬ無名性は面白いし、相棒のサイキック娘もキャラクターがきちんと消化されていて、少々場数を踏んだところで暴れ始めるあたりは好ましい。対する悪党一味の人相の荒廃ぶりもなかなかのもので、深い頬傷をつけて『ママ』を演じたレナ・ヘディは独特の存在感を発揮していていた。3Dで鑑賞したが、3Dでなにをやっているのかというと、ハイスピードショットによる顔面破壊を飛び出す絵にしてみました、というようなことで、あきらかに悪趣味ではあるけれど、とてもよくできていたことは認めなければならないだろう。
ちなみに95年版のスタローン版は公開当時に劇場で見ているけれど、やたらと高音域に傾いた銃声がとにかく耳に痛かったという以上の記憶がない。 


Tetsuya Sato