2014年4月24日木曜日

シティ・オブ・ゴッド

シティ・オブ・ゴッド
Cidade de Deus
2002年 ブラジル・フランス・アメリカ 130分
監督:フェルナンド・メイレレス

神の町と呼ばれる貧民窟がリオデジャネイロの郊外にあり、どうやら電気も水道もなくて、ただ家の形をした箱だけがあって、行き場を失った人間が流れ込んでいる。話は1960年代、その神の町に平屋ばかりが立ち並び、隣にはまだ森があった頃から始まって、建物が高層化していく70年代を背景に少年ギャングの抗争を描き出す。まだ幼稚園に行っていた方がよさそうな連中が銃を片手に強盗を計画し、徒党を組んでパン屋を襲撃したりするのである。そのうちに麻薬の売買にからんでシマを取り合うようになり、対立する二大勢力の抗争に発展して真昼間から銃弾が飛び交って死体が転がる。
大人というのは警官くらいしか登場しない。銃を握って走り回るのは5、6歳から20歳ぐらいまでの若者で、それが何かというと誰かに銃口を向け、躊躇しないで引き金を引く。何もなくてもその有様で、人命がとにかく格安なのである。それでもそこで生活しているし、やっぱりどこかへ出て行こうと考えている。
ギャングの親玉であり、事実上の主人公であるリトル・ゼは頭が切れる反面、想像力を持ち合わせていないという欠陥があり、だからどこかへ行こうなどとは考えずに、ただそこにいて、激化する抗争の中に身を置いてしまう。報われない選択しか許されないという点で、いちばん悲劇的であろう。ドキュメンタリー調のスタイルはダイナミックで、リアリティがある。よく吟味された演出はタイムスパンの長い群像劇をきちんと消化しているし、リズム感にすぐれ、ときにはユーモラスでもあり、そして状況を的確に説明して観客に混乱を与えない。これは悪くない。


Tetsuya Sato