2014年4月18日金曜日

8 1/2

8 1/2
Otto e mezzo
1963年 イタリア/フランス 140分
監督:フェデリコ・フェリーニ

映画監督グイド・アンセルミは新作の撮影開始を間近に控えてスランプに陥り、脚本を完成させることができないまま湯治場に逃げ込んで鉱泉水を飲んでいると、そこへ愛人が現われ、プロデューサーが現われ、その他の大勢も現われ、妻を呼ぶと妻も現われ、自分を包囲する現実を糊塗するためにしばしば幻想へと逃げ込むが、幻想はグイドを心地よい場所へと誘う一方で不快なところへも誘い込む。
劇中の台詞でも指摘されているようにシンボルがてんこ盛りにされており、すべてのシンボルはグイド自身と直結してはいるものの、全体としてなにかしらの総合的な関係性を保持しているわけはない。グイド自身が認めているように、そこにはおそらく混乱がある。そしてそうした混乱も含めて映画は立体感を備えた一個の造形物として成立し、その粘りつくような不可思議な造作は比類がない。絵と音が心地よいのである。



Tetsuya Sato