2013年8月7日水曜日

昆虫大戦争

昆虫大戦争
1968年 松竹 84分
監督:二本松嘉端

秋山譲治は東京にある生物学研究所の昆虫学者南雲博士の依頼を受けて亜南群島で昆虫採集の仕事をしていたが、譲治が見つけて東京に送った虫は未発見の種類で、しかも恐るべき神経毒を持ち、人間を狂い死にさせる力を備えていた。その譲治の妻ゆかりは家計を助けるべく島のホテルで働いていたが、ホテルの親父はゆかりに懸想し、譲治は譲治で昆虫採集と称して妻から離れ、謎のブロンド美女アナベラと浜辺で日光浴などを楽しんでいる。すると上空にB52が現われて、昆虫の群れにまかれてエンジンを損ない、墜落していくのである。
アメリカ空軍は早速「折れた矢」作戦を発動してゴードン中佐が率いる調査隊を島に送るが、脱出した乗員は異様な傷をこしらえて息絶えており、唯一助かった黒人兵チャーリーは頭を打って意識を失っている。島の警察は空軍仕様の時計を持ち歩いていた譲治を殺人容疑で逮捕するが、譲治は自分は無実であると言い張るのであった。
譲治を救うために東京から南雲博士が到着し、乗員の死体を調べて虫の咬み傷であると指摘し、また意識を取り戻したチャーリーはうわ言の合間に虫に対する恐怖を訴えるが、任務の重責にしゃちほこ張ったゴードン中佐は譲治が犯人であると信じて譲ろうとしない。だが、いずれにしてもゴードン中佐の目的は失われた水爆の発見にあり、チャーリーを責め立てて墜落地点を調べていると、譲治は護送の途中で逃げ出してアナベラの家にかくまわれる。実はこのアナベラこそが謎の昆虫の生みの親で、ナチスドイツの強制収容所を生き延びた彼女は人類への憎悪に取り憑かれ、昆虫を使ってこれを滅ぼそうとたくらんでいたのである。
いや、それだけではないのである。ホテルの親父は実はコミュニストのスパイで部屋に無線機を隠していて、ゴードン中佐の鼻先から水爆を奪い取ろうとたくらんでいて、そのためにチャーリーは誘拐されてしまう。そしてこのコミュニストのスパイどもはアナベラと通じており、アナベラはチャーリーに告白を強いるために毒虫に咬ませ、そんなことをしたら死んでしまうのではないか、などと見ているこちらは心配するわけだけど、チャーリーは飛行機が水爆を積んでいたと告白して発狂する。
コミュニストどもはチャーリーにピストルを与えて解放し、ピストルを握ったチャーリーは島の診療所の女医を襲い、察するに狂っているからであろう、リボルバーから再装填なしで15発も発射する。チャーリーが狂った理由を探るために南雲博士は自分を虫に咬ませるという実験をおこない、その結果、感じやすい虫たちは核の脅威を感じ取って、核戦争が起こる前に人類を滅亡させようとたくらんでいたことが判明する。南雲博士が無事なのはすでに解毒剤を持っていたからで、そしてコミュニストどもは譲治を脅して水爆の在り処を見つけ出し、虫の脅威を知ったゴードン中佐は南雲博士をさらって島から逃れ、証拠を隠滅するために島ごと水爆を爆破しようとたくらむのであった。
ホテルが一つしかないような小さな島で、与太同然でコメディにしかならない状況や人物関係を扱いながら、核の脅威、東西対立の脅威、戦争の脅威など、メッセージを山ほども謳い上げ、最後には登場人物がほとんど全滅してしまうというシニカルな内容になっている。特殊効果の水準は総じて低いが、虫の群れなどは頑張っていた。


Tetsuya Sato