2013年8月17日土曜日

愛と裏切りの戦場

愛と裏切りの戦場
L'Amore e la guerra
2007年 イタリア 206分 TV
監督:ジャコモ・カンピオッティ

1917年。レジス伯爵家の令嬢アルベルティナはアルプスでオーストリア軍と対峙しているイタリア軍の歩兵中尉と文通をしていたが、やがてそれだけでは足りなくなり、会ったことのない中尉と会い、また祖国への義務を果たすため、看護士を志願して戦地へおももき、野戦病院の目を覆う惨状に衝撃を受ける。それでも気を取り直して中尉の所在を質し、中尉の所属部隊が要塞に駐屯していることを知って異動を志願、そこで父親の将軍と遭遇するが、要塞はドイツ軍の攻撃を受けて父親は戦死、イタリア軍は後退を開始し、トリノからやって来た母親が夫の遺体とともにアルベルティナを連れ戻そうとする。しかし難民の群れを見たアルベルティナは帰還を拒否、祖国への義務を果たすために再び看護士の制服をまとう。
一方、要塞から後退したイタリア軍部隊はアルプス山中に布陣してオーストリア軍の要塞と対峙していたが、強固な造りの要塞がイタリア軍の攻撃をことごとく跳ね返すので山には死体の山が築かれている。ところが元鉱夫で有能なパッリ軍曹がイタリア軍の陣地からオーストリア軍の要塞までトンネルを掘る戦術を将軍に提案、将軍はこれを受け入れてパッリ軍曹に指揮を託す。このパッリ軍曹こそがアルベルティナの文通相手の手紙を代筆していた本人であり、実はすでにアルベルティナが心ひそかに焦がれる相手であり、パッリ軍曹もまたアルベルティナに焦がれていた。そしてパッリ軍曹の上官であり、賭博で財産を蕩尽して借金を抱え、アルベルティナの持参金を狙っていたアヴォガドロ大尉としては、これがまず面白くないし、パッリ軍曹が自分の頭ごしに将軍に提案をしたことでも面白くないし、無知で出の悪いパッリ軍曹が予想に反して知的にふるまい、将軍から好意の視線を向けられるのも面白くないので、たまたま接近してきたオーストリアのスパイに情報を売り、パッリ軍曹率いるイタリア軍部隊はトンネルでオーストリアの罠にあって壊滅的な打撃を受け、怒る将軍に向かって大尉はパッリ軍曹の裏切りをほのめかし、当のパッリ軍曹はオーストリア軍の捕虜となり、裏切り者の正体を暴くために収容所を脱走して負傷し、駆けつけてきたアルベルティナの看護を受ける。
回復したパッリ軍曹は軍に復帰し、汚名を晴らすために将軍への面会を求めるが、将軍はアヴォガドロ大尉に指揮を託して戦線へ移動していたため、軍曹は逮捕されてロッカの軍監獄へ移され、そこで死刑の判決を受けるので、アルベルティナは愛するパッリ軍曹を救うためにアヴォガドロ大尉の求婚を受け、アヴォガドロ大尉はパッリ軍曹を監獄から解放するものの、懲罰部隊に送って敵の銃弾の正面に立たせる。これによってアヴォガドロ大尉は邪魔者を片付けられるはずであったが、尊大でひとの心を踏みにじる大尉はオーストリアのスパイの心も傷つけていたので、トリノへ戻ろうとするアルベルティナの前にはオーストリアのスパイが現われてアヴォガドロ大尉の反逆の証拠を差し出し、真相を知ったアルベルティナは前線へと急ぐが、懲罰部隊はすでに突撃を始めて大半が戦死、アヴォガドロ大尉を逮捕しようとした副官は大尉に殺され、アルベルティナもまた窮地に陥るが、オーストリア軍の陣地を破壊してイタリア軍に勝利をもたらしたパッリ軍曹がそこへ現われ、アルベルティナを救い出し、悪党の大尉は逮捕される、という話を3時間半かけてやるテレビのミニシリーズである。
いちおう第一次大戦中の激戦地カポレットが舞台になっているが、愛し合う二人が様々な障害、というよりももっぱらアヴォガドロ大尉という障害を乗り越えて結ばれるまで、という内容で、ほれたのはれたの裏切るので忙しくて戦争はほとんどやっていない。冒頭と終盤に二度ほど戦闘シーンが挿入されているが、少人数で迫力もない。ただ、イタリア軍の制服、装備、要塞などのディテールは非常によくできていて、これは珍しいし、戦闘シーンがいいかげんなのと、アヴォガドロ大尉を悪役に仕立てる都合上、指揮システムを無視してなんでもあり、といういいかげんな設定が気にならなければ、おおむね面白い。 


Tetsuya Sato