2013年6月28日金曜日

チェ 28歳の革命

チェ 28歳の革命
Che: Part One
2008年 フランス/スペイン/アメリカ 126分
監督:スティーヴン・ソダーバーグ

ゲバラがカストロと出会ってキューバ革命に共鳴し、ともにキューバに上陸して山中でゲリラ戦を展開し、やがて勢力を増やして都市部に侵攻、バチスタ政権を崩壊させるまで。
ベニチオ・デル・トロがちゃんとゲバラに見えてくるあたりはさすがだが、映画自体は一見したところ創意を捨てて、どうやら「自伝」的事実の再現に努めている。結果として出来上がったものはテレビの歴史検証番組に挿入されているような安っぽい再現劇であり、音楽の使い方も含め、そのほとんど黎明期的とも言えるような安っぽさはいかにもソダーバーグ的な、つまり観客の足元を見透かしているような下劣な創意と言えなくもないものの、安っぽい再現劇はどこまでいっても安っぽい再現劇であり、かなり退屈なしろものである。
少人数のゲリラが山のなかをうろうろし、ゲバラがあっちへ行っては説教をし、こっちへ行っても説教をし、行軍でへとへとになった兵士に向かって算数の宿題をしろと説教する淡々とした描写の山は世界偉人伝ゲバラ編逸話集ではあっても映画ではない。並行する国連演説編も16ミリの粗い映像は悪ごりにしか見えない。それでも後半、サンタクララの攻防戦に入ると市街戦の状況がそれなりに立体的に描き出されていて、ここはけっこう面白かった。
これが初めてではないとはいえ、何を考えているんだ、ソダーバーグ、というのが正直な感想である。一般的なイメージに縛られて何もできなかった、ということなのだろうか。乱暴な言い方をするなら、どうせ「ガンダルフ」なのだから、いっそのことバチスタの塔を遠くに見ながらこっちでカストロが塔を作り、ゲバラは地に呑み込まれたあと、白ゲバラとなって復活、という話でもかまわなかったのではあるまいか。

Tetsuya Sato