2015年8月1日土曜日

Plan-B/ 接触

S7-E07
接触
 最後に受け取った手紙を手がかりにして、わたしは彼を探して山に入った。消印にあった山間の小さな町で道を聞いて、森の奥の荒れ果てた村を訪れた。廃村のようにしか見えなかったが、住人がいた。そこには向上する機会から見放された不幸で不潔な男女がいて、自分が不幸であることも不潔であることも知らないまま、自堕落で退化した生活を送っていた。わたしは彼を村のはずれの小屋で見つけた。変わり果てた姿になって、不潔な毛布にくるまって、目に狂気の色を浮かべていたが、まだ人格は残っていた。彼はわたしをわたしと見分けた。自分が何者で、どこから来たのかも覚えていた。初めは口を閉ざしていたが、堰を切るとあとはとめどがなくなった。熱に浮かされた状態で、わけのわからないことを話し続けた。時空を超えて旅する者に、森のどこかで出会ったという。それは人知を超越した存在で、想像を絶する姿で現われて、意思疎通を拒んだという。だから彼には見上げることしかできなかった。だが俺はそれに触れた、と彼は言った。そう言いながら、不潔な毛布の下から腕を出した。腐っていた。皮膚がぼろのように垂れ下がって、指の骨が剥き出しになっていた。見ている前で、溶けた肉がしたたり落ちた。わたしは悲鳴を呑み込んで、彼の前から、不潔な小屋から逃げ出した。わたしは町に戻ってすぐに病院に連絡を取り、病院が送った看護人が彼を安全な場所に連れ戻した。彼は右の肩から下を切断され、いまは隔離された病室にいる。

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