2015年8月24日月曜日

サイレント・マウンテン 巌壁の戦場

サイレント・マウンテン 巌壁の戦場
The Silent Mountain
2014年 オーストリア/イタリア/アメリカ 94分
監督:アーンスト・ゴスナー

1915年、チロルでホテルを経営するグルーバー家の長男アンドレアス・グルーバーは姉リズルがイタリア人アンジェロ・カルツォラリと結婚したことに激しく反発するが、アンジェロの妹フランチェスカと恋に落ち、そこで第一次大戦が勃発、カルツォラリ一家はイタリアに戻って姉夫婦は引き裂かれ、寄宿学校へ戻ることを拒んだフランチェスカはアンドレアスに匿われてチロルに残り、アンドレアスは翌日父親とともに出征(オーストリア正規軍というよりは地元の義勇軍のように見える)してドロミーティの山頂に陣を張って山岳猟兵部隊と合流、反対側のイタリア軍には徴兵されたアンジェロがいる、という状況でイタリア戦線が動き出すが、リズルに懸想する地元の教師がフランチェスカの存在に気がついて悪事を働き、さらにリズルにも悪事を働くのでアンドレアスは気が気ではなく、一方、オペラ狂の大尉に率いられたイタリア軍はオーストリア軍の足元に向かってトンネルを掘り、トンネルを掘って敵陣に突入するはずがオペラ狂の大尉は山ごと爆破すると言い始めるので、アンジェロは脱走してオーストリア軍の陣地へ走り、教師はさらに悪事を働くのでアンドレアスは家に走る。 
オーストリア軍山岳猟兵を含めて制服などはきちんと再現されているように見えるし、オーストリア、イタリア双方の陣地構築の風景などは珍しいし、イタリア軍指揮官はやっぱり狂気にとらわれているし(レオーネ将軍には負けているが)、高所では機関銃に落雷するんだね、という珍しい描写があるし(とはいえ、それがわかっているなら雷が鳴っているときにはどちらも外へ出ないであろう)、東アルプスの雲海の下で繰り広げられる砲撃戦はなにやら幽玄でもあるが、戦争の悲劇にばかり気を取られて肝心の戦争をきちんとやっていない、というどこかの国の戦争映画のようなことになっていて、わかるのは山岳戦だというところまでで、その先の空間がまったく把握できない上に、94分という比較的短い尺であるにもかかわらず、だれ場が目立つ。序盤の結婚式のシーンでクラウディア・カルディナーレが顔を出している。ちなみにDVDはインターナショナルバージョンだからなのか、英語版のみ。イタリア側はイタリア語をしゃべっているのにチロル側は英語をしゃべっている。


Tetsuya Sato