2015年4月7日火曜日

Plan-B/ 羊

S4-E17
 高原の隅で霧雨を浴びる研究所で、一人の科学者が成長促進剤の開発を進めていた。この成長促進剤を使えばあらゆる家畜を巨大化させることが可能になり、人類は食料問題を永久に解決することができるだろう。狙いは確実で、しかも効果は絶大だったが、制御にいくらかの問題があった。科学者は制御方法を検証するために羊を使って実験を続けた。実験を続けるあいだに羊は研究所よりも大きくなり、屋根も壁も破ってさらに巨大化すると、密生する毛のあいだから小さな羊を生み落とした。次から次へと雨でも降らせるように生み落した。小さな羊には脚がなかった。ウールのボールに羊の頭をくっつけてメーメーと鳴くこの変異体の集団は母体から成長促進剤の影響を受け継いでいて、たちまちのうちに大きくなるとそれぞれが羊の群れを生み落とした。科学者は廃墟と化した研究所で最後の電力を使って計算を始めた。羊の群れは二週間でこの大陸を覆い尽くし、半年後には地球全体を覆うことになるだろう。科学者は恐怖に震えた。人類に残された時間はあまりなかった。

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