2013年7月6日土曜日

モンスターズ・インク

モンスターズ・インク
Monsters, Inc.
アメリカ 2001年 92分
監督:ピーター・ドクター、デビッド・シルバーマン

クロゼットのドアの隙間から夜中に出現する化け物は、そもそもいかなる用向きを携えているのか。もちろん子供を怖がらせるためではあろうが、ただ怖がらせていればよいほど暇なのか。たぶんそんなことはないだろう、というのがどうやらこの映画の出発点で、そしてその理由が発見された瞬間に、子供を怖がらせる行為が化け物の側のノルマに転じるという発想がなかなかに恐ろしい。怪物たちは子供から悲鳴を盗んで、それをエネルギー源に使っていたのである。ノルマを果たせないと電力供給がストップしてしまうのである。ところが最近の子供たちはあまり怖がらなくなっていて、だから怪物たちの方でもちょっぴり強硬な手段を考え始めたりしているのである。そんな怪物の世界へ人間の子供が紛れ込んできて、本当は子供が怖くて仕方ない怪物たちはたいそう恐ろしい思いをすることになる。この、ほとんど乳幼児という感じの女の子がちょっとすごい。まず人語を喋らないし、直感と感触を頼りにしているので怪物を全然怖がらない。毛むくじゃらの怪物は毛むくじゃらだからニャンコなのである。ニャンコ呼ばわりされた怪物の方でも、女の子がぺたぺたとなついてくるからなんとなく情が移っていく。名前を付けるのは危険なのだ。最初はとにかく片づけることしか考えていないけど、そのうちに保護者としての強い責任を感じ始めるようになり、最後には悪と戦ってしまう。
いや、実に立派に責任をまっとうしていました。
CGは感動物。噂には聞いていたけど、あの毛並みの処理はものすごい。なんとなく油染みた感じがするし、逆毛も立つし、粉雪がくっつくとそれはもうたいへんな状態になるのである。それに色調や構図のデザインなどにも心強い安定感が現われていて、画面が実に見やすくなっている。ほとんど天空を満たさんばかりになって行き交うクロゼットのドアの大洪水もビジュアル・イメージとしてものすごい。それにしてレストラン「ハリーハウゼン」が寿司屋だったとは。 

Tetsuya Sato