2013年7月26日金曜日

インドへの道

インドへの道
A Passage to India
1984年 イギリス/アメリカ 163分
監督・脚本・編集:デヴィッド・リーン

英国人女性アデラ・ケステッドは将来義母となる可能性のあるモア夫人とともにインドに渡り、ボンベイから鉄道でチャンドラボアへ入ってモア夫人の息子で判事をしているロニーの出迎えを受け、地元の英国人サークルは早速モア夫人を囲い込みにかかるが、インド人に会いたいというモア夫人の希望を入れて地元の学校で教鞭を取るリチャード・フィールディングがインド人の医師アジズ、哲学者ゴドボルを招いてお茶会を開き、インド人の家を訪ねてみたいというモア夫人の希望に対して英国人を招くことができるような家ではないと考えたアジズはモア夫人とアデル・ケステッドをマラバー洞窟の探検に誘い、仲間の助けを得て準備を整えてモア夫人、アデル・ケステッドとともに登山鉄道に乗り込んでマラバー洞窟を目指し、ガイドを先頭に立てて洞窟へ入っていくとマラバー洞窟が作り出す奇怪な反響に取り乱したモア夫人はそこで探検をやめ、アデル・ケステッドとアジズがガイドの案内で山の上にある洞窟を目指すが、そこでアジズから離れたアデル・ケステッドはひとりで洞窟に入って、察するに暑熱に打たれたのであろう、半狂乱で山を駆け下りて町へ戻り、いぶかるアジズがモア夫人とともに町へ戻るとアジズは逮捕され、アデル・ケステッドを襲った罪によって起訴されるので、たちまちのうちに町は反英主義に染まって暴動の気配を帯び、アジズの無実を確信するリチャード・フィールディングは英国人サークルと決別し、裁判が始まると英国人の検事は偏見を隠しもしないでアジズの人格を攻撃し、カルカッタから現われた反英主義者の弁護士は検事と法廷を侮辱し、あられもない状況にたまりかねたモア夫人はインドを離れ、ついにアデル・ケステッドが証人台に立って真実を話し始めるが、察するに暑気あたりで頭が混乱していたということであろうが、自分は婚約者をまったく愛していなかった、という事実を認めて告訴を取り下げてしまうので、アジズは釈放され、英国人社会はアデル・ケステッドを見捨てる。
『ライアンの娘』のローズとは対照的に衝動を内向させたアデル・ケステッドがジュディ・デイヴィス、フィールディングがジェームズ・フォックス、怪しい賢者ゴドボルがアレック・ギネス。E・M・フォースターの原作は未読だが、ヒロインの人物造形からするとデヴィッド・リーンの手がかなり入っていると考えたほうがいいだろう。画面にはエキゾチックで、同時にステレオタイプでまとめられた「インド」が出現し、そこに英国風の植民地根性が醜悪さを帯びたステレオタイプで投げ込まれている。細部にわたる描写は実にカラフルで、情動にからむ表現はヒロインが抱える英国的抑圧を反映してか、痛々しい。ストーリーだけ拾い上げるとよくよく傍迷惑な内容だが、デヴィッド・リーンの緩急を心得た演出は3時間近い上映時間にまったくだれ場を与えていない。 


Tetsuya Sato