2016年11月7日月曜日

フィリップ、きみを愛してる!

フィリップ、きみを愛してる!
I Love You Phillip Morris
2009年 フランス/アメリカ 97分
監督・脚本:グレン・フィカーラ、ジョン・レクア

生まれるのと同時に母親から養子に出されたことを知ったスティーブン・ラッセルはひとも驚く立派な人間になろうと決意して警官になり、敬虔なキリスト教徒の妻とかわいらしい娘と三人で幸福な家庭を営んでいたが、警官の立場を悪用して実の母親の所在をつきとめ、自分を捨てた理由を知るためにその家を訪れて門前払いされ、実は母親の所在をつきとめることが警官になった理由であったので、それを機会に警官をやめてテキサスに移り、そこでよい職とよい隣人に囲まれて幸福な家庭を営んでいたが、実は物心がついたころからゲイであったので妻に隠れて男とつきあい、交通事故にあって死と直面し、自分は自分を生きていないと気づいてカミングアウトし、妻と別れて盛大に男とつきあうようになり、男に貢ぐために金をはたき、金がなくなると詐欺をして金を稼ぎ、そのことでついに逮捕されて刑務所にぶち込まれると、そこでフィリップ・モリスと運命的な出会いを果たし、裏で手をまわして同房となって親密な関係となり、先に出所すると弁護士であると身分を偽ってフィリップ・モリスの釈放手続きを進め、フィリップ・モリスが出所すると同棲してフィリップ・モリスを養うために経歴を偽ってとある会社に財務担当重役となってもぐり込み、なぜか信任を受けるといきなり退屈し始めて、会社が扱う医療費を勝手に投資にまわしてその利益によって私腹をこやし、それがばれてまた刑務所にぶち込まれると愛するフィリップ・モリスと会うために手段を尽くして脱獄を繰り返し、そのことでテキサス州政府が激しく手を焼いたので終身刑で現在もなお服役中という実話らしい。
ある事件の再現という範囲ではそれなりによくできているし、ジム・キャリーは体重を変えて熱演し、ユアン・マクレガーは受身の男をいかにもといった風情で演じているが、監督をしているのが『キャッツ&ドッグス』の脚本家コンビだから、ということになるのか、微妙に薄ら寒い。その寒さの理由はよくわからないが、視点の維持に失敗しているのと、台詞で説明しすぎているからであろうとさしあたりは疑っている。
Tetsuya Sato