2016年2月28日日曜日

トポス(116) ヒュン、街道を進んでミュンと遭遇する。

(116)
 ヒュンは火を噴く山を目指して街道を進み、道が交わる場所でミュンが率いる囚人の一団と遭遇した。ミュンはヒュンに使者を送り、ヒュンはミュンとの会談に応じた。
「俺は運命を受け入れている」とヒュンが言った。「俺は世界を救う英雄になる。だから俺は邪悪な黒い力と戦うんだ」
「予言が成就しつつある」とミュンが言った。「邪悪な黒い力は打ち倒されて、世界は進歩的理念を受け入れるだろう」
 ヒュンとミュンの前にネロエの影が浮かび上がった。
「わたしはネロエ」とネロエが言った。「急がなければなりません。邪悪な黒い力は戦いの準備を整えています。巨大な狼にまたがるオークの軍が、巨大な鉄の棍棒を担いだトロールの群れが、あなた方を待ち構えています。戦いは厳しいものになるでしょう。しかし、躊躇してはなりません。世界を救うためには、いまこの瞬間に悪に立ち向かわなければならないのです」
 蛮族の男たちも囚人たちと話し合った。話し合いの結果、現在の無法状態をすみやかに解決すべきであるという点で両者の見解は一致した。また文明の発展段階に関する一般認識を共有し、双方が法感覚の草分け的状態にあることを確認した。そこでまず蛮族の男たちが蛮刀を抜いて囚人たちに斬りかかり、囚人たちは小火器、斧、大型ナイフなどで応戦した。戦いは半日にわたり、血で血を洗う激戦となって蛮族と囚人の大半が倒れた。まだ立っていた者はキュンが羊飼いの杖で突いてまわって動きをとめ、クロエがショットガンでとどめを刺した。死体が山ほども転がったが、クロエの心は晴れなかった。

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