2015年7月11日土曜日

Plan-B/ 善人

S6-E25
善人
 取り柄のない村で生まれた若者が荒れ野を渡る長い道に入っていって、軽い足取りで歩き続けて谷の手前で一人の旅人を追い抜いた。そのまま道に沿って先へ先へと進んでいくと、前方から盗賊の一味がやって来るのが目に入った。若者はやり過ごすことにして手近の岩に身を潜め、岩の陰から様子をうかがっていると先ほど追い越した旅人が荷物を背負って現われて、逃げ出す間もなく盗賊の一味に囲まれた。盗賊たちは旅人に襲いかかって身ぐるみを剥ぎ、おびえてうずくまる旅人に殴る蹴るの暴力を加えた。盗賊たちが立ち去っても、旅人はその場で腹を押さえて転がっていた。若者がそのまま様子をうかがっていると、商人風の男が現われて、横たわる旅人の横を素通りした。さらに様子をうかがっていると、今度は貴人風の男が数人の供を連れて現われて、横たわる旅人の横を素通りした。続いて兵士の一団が現われ、その後には王族の一団がにぎやかな行列を組んで現われたが、どれもが横たわる旅人の横を素通りした。このように、と若者は心の中でつぶやいた。道に倒れた者は救いを求めて、善人の訪れを待つことになる。

Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.