2014年11月18日火曜日

Plan-B/ 死者

S1-E02
死者
 床に入って眠ろうとしていた。睡眠導入剤が効き始めて、頭のなかにぼんやりとした眠気を感じたところで枕元の携帯電話が振動した。電話を取ってモニターを見た。午前一時をまわっていた。電話の声が、彼が死んだとわたしに伝えた。長くはないと聞いていた。病院まで何度か見舞いにいったが、痩せ衰えて痛みに苦しむ様子が痛々しかった。雄弁でたくみにユーモアをあやつった男が痛みを耐えて言葉少なに話す様子が気の毒だった。しかし終わったのだ、とわたしは思った。電話を枕元に戻して眠ろうとした。妙な気配を不意に感じてドアのほうへ目を向けた。ドアの輪郭がかすかに見えた。ノブをまわす音がした。ドアを揺する音がした。来たんだな、とわたしは思った。

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