2014年6月16日月曜日

ニード・フォー・スピード

ニード・フォー・スピード
Need for Speed
2014年 アメリカ 131分
監督:スコット・ウォー

ニューヨーク近郊の微妙にレッドネックな町で修理工場を営むトビー・マーシャルは天才的な自動車修理工で傑出したレーサーであったが、インディのレーサー出身の自動車ディーラー、ディーノ・ブルースターに恋人を奪われ、弟分を殺され、自動車泥棒の汚名を着せられ、修理工場を失った上に服役までさせられるので、出所してくるとディーノ・ブルースターを倒すために昔の仲間に招集をかけ、自分でチューンナップしたマスタングを自由にするとストリートレース『デリオン』に出場するためにカリフォルニアを目指すが、なにしろ仮釈放中の身なので警察には追われ、ディーノ・ブルースターの妨害にも出会い、苦労の末にサンフランシスコにたどり着いたところで車を失い、かつての恋人の手助けで車とディーノ・ブルースターの悪事の証拠を手に入れると『デリオン』に参戦する。 
トビー・マーシャルがアーロン・ポール、ディーノ・ブルースターがドミニク・クーパー、『デリオン』のオーナーがマイケル・キートン。アーロン・ポールはあれやこれやと苦悩を抱えているところが『ブレイキング・バッド』のジェシー・ピンクマンに重なって、恋人を失ったのも敵の罠にはまったのも、もしかしたらホワイト先生の不始末のせいではないのかとつい疑いたくなるが、それはそれとして、なかなかにいい味を出している。
監督は『ネイビーシールズ』のスコット・ウォー。今回も余計なことはしないで化け物じみた車に異様なまでの生々しさを与えてなまめかしく走らせて、ハンドルを握るドライバーの恍惚とした表情をハイスピードショットでとらえている。自分がなにを撮っているのかが非常によくわかっていて、そこに関しては一点の曇りもない。序盤のストリートレースの音がまずすさまじいし、そこに列車をからめる演出はうまい。マスタングの異様な輝きもすごいし、三台のアゲーラの走りもすごいし、中盤の警察とのカーチェイスも迫力に富んでいる。クライマックスではブガッティやマクラーレンなどが並んでほとんどF1ではないかと思わせるような精緻なレースを展開し、それを多様なカメラワークでとらえた映像にはただただ舌を巻く。

Tetsuya Sato