2015年3月4日水曜日

Plan-B/ 心臓

S3-E24
心臓
 男は自分の心臓を担保にいくらかの金を銀行から借りた。男が行方をくらましたので、回収不能になるのを恐れた銀行は債権証書を投資銀行に売り渡した。投資銀行は買い取った債権証書をほかのいくつかの債権証書と組み合わせて新しい証券パッケージを開発した。格付け機関はこの証券パッケージにAAAの格付けを与え、市場に売り出されると新規性で多くの買い手の目を引きつけた。男はとある町の銀行でこの証券の広告に目をとめた。見えないほどこまかな字で書き込まれた説明を最後まで読んで、投資銀行に電話を入れた。心臓移植のドナーに登録しているので自分の心臓の流動性は実は担保されていないと説明して、事実を暴露されたくなければ金を払えと言って投資銀行を脅したが、投資銀行は事実を格付け機関に連絡し、格付け機関は証券パッケージの格付けをBBBに変更した。男はこれをニュースで見て気分がいきなり悪くなり、病院に運ばれてそこでそのまま死亡した。男の死を知った格付け機関はパッケージの格付けをCCC-に変更し、投資銀行は債権を組み替えて投機性がきわめて高い新商品を開発した。

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