2012年10月1日月曜日

ボーン・レガシー

ボーン・レガシー
The Bourne Legacy
2012年 アメリカ 135分
監督:トニー・ギルロイ

CIAがジェイソン・ボーンだのトレッド・ストーンだのトレッド・ストーンのアップグレード版のブラックブライアーだのを隠蔽しようとたくらんで激しくへまをしでかすので、その尻拭いのために国家安全保障局も顎で使う、なんとかいう名前の恐ろしい組織が登場してエドワード・ノートン扮するリック・バイヤーの指揮のもと、ジェイソン・ボーンだのトレッド・ストーンだのトレッド・ストーンのアップグレード版のブラックブライアーだのといったあれやこれやのプログラムを隠蔽しようとたくらんで証人をあれして証拠をこれして、もちろんあれやこれやのプログラムも停止することにして、停止するわけだから念書でも取って全員解雇すればよさそうなものをいきなり抹殺、それもミサイルをぶち込むなどというコスト意識のかけらもないことを始めるので、あれやこれやのプログラムの一つであるアウトカムの要員アーロン・クロスが抹殺の魔手を逃れて生き残り、あれやこれやのプログラムの一つにかかわっていた、なんだか難しい名前の製薬会社の研究員マルタ・シェアリング博士もまたあれやこれやにカウントされていたのであやうく抹殺されそうになっていると、そこへアーロン・クロスが飛び込んできてマルタ・シェアリング博士を窮地から救い、ややIQの低いアーロン・クロスは思考能力を保つためにプログラムが提供する薬を飲み続けなければならない、ということでアーロン・クロスとマルタ・シェリング博士は薬の工場があるマニラを目指し、二人が生き延びていることを知ったリック・バイヤーはジェイソン・ボーンだのトレッド・ストーンだのトレッド・ストーンのアップグレード版のブラックブライアーだのアウトカムだのといったあれやこれやのプログラムのなかでも最新最強のプログラムであるラークスからとにかくふれこみだけはすごい人間兵器を送り込む。 
最初からそうだった、と言えば言えないこともないけれど、改造人間が次から次へと、というところはもうほとんど『仮面ライダー』なのである。
このばかばかしさを自覚してやっているのか、自覚なしにやっているのか、そこがよく見えないところがおそらく最大の難点であろう。さすがに絵としてはいちおう完成しているが、全体としてのつながりが悪く、時間の整理が悪く、ダイアログは荒削りで、アクション・シーンはリズムに乏しく、マニラの追跡シーンはしばしば遠近感がつぶれている。ピンボケを恐れずにつなぐグリーングラスのむこうを張って望遠レンズでも持ち込んだせいであろうか。さまざまな欠点にもかかわらず、ジェレミー・レナーはよくやっているし、レイチェル・ワイズはきれいに撮れている。ただ、エドワード・ノートンはなぜエドワード・ノートンなのかよくわからないし、あの回想シーンは完全に無駄でだし、くだらない。『ボーン・アルティメイタム』と並行して走っている状況、ということでジョーン・アレン、アルバート・フィニー、デヴィッド・ストラザーン、スコット・グレンなどが顔を出しているが、どうにも刺身のつまのようで面白みはない。 

Tetsuya Sato