2017年6月5日月曜日

The Brink/史上最低の作戦

The Brink/史上最低の作戦
The Brink
2015年 アメリカ 1シーズン10話
監督:ジェイ・ローチ、マイケル・レーマンほか

アメリカがひそかに化学攻撃をおこなっていてパキスタンの男たちから性的能力を奪おうとしていると信じる軍人ザマーンがクーデターを起こしてパキスタンの政権を奪取、とりあえずテルアビブに核攻撃をすると宣言するのでアメリカは第五艦隊に出動を命じてパキスタンの核施設破壊を計画するが、下半身にまったく抑制がなくてアジア人の女に絞殺されることを考えて興奮するラーソン国務長官はピアース国防長官と激しく対立して平和裏に解決することを提案、心がひどく動きやすい大統領はラーソンに時間を与え、イスラマバードでかつてラーソンの女衒として活動したことがある在パキスタン大使館職員で国務省下級職員のアレックス・タルボットがまったくの偶然からザマーンの病歴を記したカルテを手に入れると、ラーソンはタルボットに対してザマーンの弟でラーソンの大学時代の学友であったラジャとの接触を命じ、ラジャにクーデターを起こさせてザマーンを排除しようとたくらむが、そのあいだにインド洋から偵察に飛び立ったF-18は飲むべき薬を間違えたせいでインド軍のドローンを誤って破壊したあとパキスタンの対空砲火を浴びて撃墜され、脱出したパイロットはタリバンの支配地域に降り立って正体不明の状況に出会い、インドの外相はラーソンが自分を侮辱し続けていると憤慨し、中国軍はカシミールの部隊を増強し、イスラエルはイスラエルで先制攻撃の準備に移り、アメリカ軍も総攻撃の準備を整え、気がついたらロシア軍がエストニア国境に集結していてエストニアのことは我々にまかせてくれと言ってくるので、これはもう第三次世界大戦は避けられない、というHBO製作のミニシリーズで、1話30分、全10話のシットコム。
パイロット版の監督をジェイ・ローチが担当し、残る7話のうちの4話をマイケル・レーマンが担当している。ラーソン国務長官がティム・ロビンス、アレックス・タルボットがジャック・ブラック。ティム・ロビンスがこれまでに見たなかでは最高にいい。プロットはワシントンからニューデリー、テルアビブ、ジュネーブ、再びワシントンと飛び回るラーソン国務長官、イスラマバードでパキスタンのインテリ一家から激しい軽蔑を浴びせられる俗物アレックス・タルボット、最高のパイロットと言われながら、実際のところパイロットなのか麻薬の売人なのかよくわからないF-18のパイロット、ジークの3軸で進み、その周辺には結果を予想しないで自動的に思考する政治的怪物多数が出現する。素材の組み合わせの複雑さ、展開の小気味のよさ、そしてなによりも頭のよさがとにかくうれしい傑作である。
Tetsuya Sato