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「落下をコントロールすることはできなかった」とギュンはいつも話していた。「わたしは所長ともつれ合いながら重力の井戸の底へ落ちていった。所長が放った光子魚雷はわたしに深刻なダメージを与えていたし、その状態での大気圏再突入はわたしにさらにダメージを与えた。実を言えば、わたしは死を覚悟した。実を言えば、わたしはどんなときでも死を覚悟していた。死と向かい合う準備ができていた」とギュンはいつも話していた。「わたしが落ちた場所は、火を噴く山のふもとだった。邪悪な黒い力の軍団が集結していたまさにその場所の真ん中に、わたしは叩きつけられた。わたしは巨大化していたし、所長は巨大なメカに乗り込んでいた。巨大な物体が並んで二つも落ちてきたのだ。大混乱が起こったことは言うまでもない。ダメージがあまりにも大きかったので、わたしは変身を続けていることができなかった。わたしは変身を解いて所長の様子に注目した。所長のパワードスーツは残骸も同然の有様になっていたが、そこへエイリアンの母船が現われて、上空から強力な修復光線を発射した。壊れた機械が生き物のように動いてもとの姿を取り戻した。所長は再び八十メートルの巨体で立ち上がり、オークとトロールの軍団に向かってプラズマ弾を発射した。勇敢なオークたちが槍を構え、狼にまたがって突撃したが、目を焼く閃光のたった一撃で全滅した。愚かなトロールたちも棍棒を手に立ち向かったが、一瞬のうちに焼き殺されて灰になった。わたしは心に強く念じた。地球の危機だと、心を通じて邪悪な黒い力に訴えた。壁の割れ目の奥から、邪悪な黒い力がわたしにパワーを送ってきた。パワーゲージがたまるまで、わたしは時間を稼ぐ必要があった。そのための手段は一つしかない。わたしはピュンを呼び戻し、所長に向かって叩きつけた」
Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
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