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「呼び戻すのが、ちょっと遅かったんだ」とピュンは言った。「ギュンがすぐに呼び戻していれば、俺は回復して、うまく説明できないけど、たぶんなんとかなったんだと思う。ところがギュンはちょっと手間取った。忘れていたのかもしれないな。とにかく俺はぼろぼろになって地面に転がってた。意識はあったけど、たぶん死んでいた。で、転がってるうちに不思議な欲求が起こってさ、立ち上がって歩き出したんだ。痛風の患者みたいな具合にね。俺の爺さんがひどい痛風だったから、よく知ってるんだ。ちょうどそんな感じで近くの町まで歩いていって、最初に見つけた奴を襲ったんだ。腹を裂いて肉を食った。人間の肉だぜ。俺もいろんなことをやってきたけど、まさか人肉を食うことになるとは思ってなかった。怖かったっていうより、恥ずかしかったね。で、血まみれになって生肉を口に運びながら、俺はぼんやりと考えた。ギュンの野郎が俺に何かやったんだ、エイリアン・テクノロジーだかなんだか知らないけど、生かじりの知識で俺のからだをいじったんだって、そう思った。つまりギュンってのはそういう野郎さ。一人襲って、二人襲って、そういうことを繰り返してたら、いつの間にか、まわりが俺と同じような奴でいっぱいになってた。手当たり次第に襲いかかって、人間をちぎってむさぼってた。あんまりよく覚えていないけど、すごい悲鳴を聞いたような気がするよ。襲う相手がいなくなると、俺たちは次の町に向かって進み始めた。そう、俺たちさ、俺たちなんだ。ほかにどう言ってみようもないからな。何人いたか知らないけどさ、すごい数になっていたよ」
Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
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