2016年3月9日水曜日

トポス(123) ギュンは手を十字に交差させる。

(123)
「パワーゲージはいっぱいになったが」とギュンはいつも話していた。「休息が十分ではなかったので、変身できる時間は限られていた。パワーグラスをかけて変身を終えると、胸のカラータイマーがすでに点滅を始めていた。戦える時間は三分しかない。所長はピュンを粉砕したあと、わたしに向かって山ほどのミサイルを撃ってきた。わたしは跳躍を繰り返してミサイルをかわし、そうしながら所長に接近すると腰をやや落として構えのポーズを取ってから手を十字に交差させた」
「ギュンの手首のあたりから」と所長は言った。「得体の知れない光の束が噴き出して一直線に飛んできた。光の束はわたしの装甲を一瞬で貫き、わたしと一体化していた戦闘メカニズムを破壊した。爆発が起こり、すさまじ爆風がわたしを空へ吹き飛ばした。すぐに黄色い光が降りてきて、わたしを優しく包み込んだ。大宇宙の偉大な力の乗り物が見えた。わたしは光に包まれて、そこへゆっくりと近づいていった。だがそのときだ。ギュンが放った光線が大宇宙の偉大な力の乗り物に命中した。大宇宙の偉大な力の乗り物は粉々に吹き飛び、わたしは光の支えを失って地上に向かって落ちていった」
「地球の敵はこうして滅んだ」とギュンはいつも話していた。「わたしはデュワっと叫んで飛び上がり、落下してきた所長のからだを受けとめた。地上に降りて所長を下ろすと、八十メートルの高さから奴の顔を見下ろした。その顔に一瞬浮かんだ恐怖の色をわたしが忘れることはないだろう」とギュンはいつも話していた。「わたしは軽く足を上げて、その場で所長を踏みつぶした」

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