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「最初から最後まで全部見ていた」とピュンは言った。「杖を持ったあの小僧と、それからショットガンを持ったあのやばい女が出てきて残った連中を皆殺しにするところまで、全部見ていた。ヒュンがいたんで、俺はまじで驚いた。俺がナイフで切り刻んでやったのに、まだぴんぴんしてやがる。自然の摂理に反している、って俺は思った。あのとき生まれて初めて神を呪った。しかもヒュンの横にはミュンの野郎が立っていた。つるんでたんだ、って俺は思った。俺はハンマーを取って立ち上がった。全身ずたぼろだったけど、決意のほうが強かった。ヒュンが地獄から戻ったんなら、地獄に送り返してやらなきゃならなかった。本音を言うと俺は喜んでいた。歓喜に震えていた。俺は雄叫びを上げていた。ハンマーを構えて、ヒュンに向かって突っ走った。あの小僧が俺の前の地面を杖で突いた。とたんにすさまじい眠気に襲われ、心は底まで悲しみに浸り、頭から毒の瘴気が立ち昇ったが、それでも俺はとまらなかった。ヒュンに向かって突進を続けた。あのやばい女がショットガンを俺に向けた。最初の一撃でハンマーを振り上げた腕が吹っ飛び、次の一撃で膝が砕け、三度目ではらわたをごっそりさらわれた。それでも俺は進み続けた。とにかく気持ちだけは進み続けた。あのやばい女が俺の頭にショットガンを向けたとき、俺は遠に声を聞いた。ギュンの声だ。戻れ、ピュン。ギュンがそう言った。とたんに俺の前から世界が消えた。気がつくとまたしても薄暗い場所にいて、傷を癒され、心を闘志で満たされていた」
Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
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