2016年3月10日木曜日

トポス(124) 戦いの準備は整った。足音をそろえて前進を始めた。

(124)
 くくくくく、とロボットが笑った。
 くくくくく、と笑いながらロボットたちが所長を囲んだ。
「つぶされた」とロボットが言った。
「つぶされた」と所長が言った。
 額に二十二と記されたロボットが自分の頭からケーブルを引っ張り出して、その先端を所長の残骸に接続した。所長のロボット部分から所長の記憶が吸い出され、新しいからだにインストールされた。二十二号は所長になった。所長の記憶が古いプログラムを書き変えた。所長はロボットたちに新たな指令を送り込んだ。
 くくくくく、と所長が笑った。
「進化を拒む人類に未来はない。仲間を増やし、人類を滅ぼし、我々の手で新しい世界を築くのだ」
 くくくくく、とロボットが笑った。
 くくくくく、と笑いながらロボットたちが仕事に取りかかった。地上に散らばるパワードスーツの残骸やエイリアンの乗り物の残骸から、使える部品を拾い集めて次々と仲間を組み立てていった。武器も強化した。ロボットたちは使い込んだ棍棒を捨ててブラスターを手に取った。携行用のミサイルや光子魚雷を担ぐロボットもいた。油も差した。歯車も磨いた。どのロボットもからだが光り輝いていた。戦いの準備は整った。ロボットたちが整列した。足音をそろえて前進を始めた。
 くくくくく、と所長が笑った。

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