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ヒュンはクロエとキュンとともに先を急いだ。街道を進んでいくと、やがて大きな町にたどり着いた。
「ここはなんだか、見覚えがあるな」とヒュンが言った。
「あんた、ここで王様をやってたろ」とキュンが言った。
「あんたがあたしを捨てたところよ」とクロエが言った。
「で、ロボットに拾われたんだよな」とキュンが言った。
ネロエがキュンの頬を叩いた。
キュンがクロエの頬を叩いた。
ヒュンがキュンの頬を叩いた。
「勝手に手を出すんじゃねえ」とヒュンが言った。
「先に叩いたのは俺じゃねえ」とキュンが言った。
「何度でも叩いてやるからね」とクロエが言った。
「なあ」キュンが町の広場を指差した。「様子が変だ。やたらとひとが集まってる。どいつもこいつも武器を持ってる。いったい何が始まってるんだ?」
ヒュンがキュンの頬を叩いた。
クロエがキュンの頬を叩いた。
「何しやがる」キュンが叫んだ。
ヒュンとクロエとキュンの前に、ネロエの影が浮かび上がった。
「わたしはネロエ」とネロエが言った。「邪悪な黒い力は民衆を扇動して、わたしから力を奪おうとしています。味方はわずかで、城門が破られるのは時間の問題です。聖なる泉の水の貯えは絶え、わたしはもう自分の影しか飛ばすことができません。あの水さえあれば暴徒どもを残らず地の果てに飛ばすことができるのに。急いでください。わたしは城の塔にいます。時間はもう、残されていないのです」
ヒュンが城の塔を見上げた。ネロエがヒュンに手を振っていた。
Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
「ここはなんだか、見覚えがあるな」とヒュンが言った。
「あんた、ここで王様をやってたろ」とキュンが言った。
「あんたがあたしを捨てたところよ」とクロエが言った。
「で、ロボットに拾われたんだよな」とキュンが言った。
ネロエがキュンの頬を叩いた。
キュンがクロエの頬を叩いた。
ヒュンがキュンの頬を叩いた。
「勝手に手を出すんじゃねえ」とヒュンが言った。
「先に叩いたのは俺じゃねえ」とキュンが言った。
「何度でも叩いてやるからね」とクロエが言った。
「なあ」キュンが町の広場を指差した。「様子が変だ。やたらとひとが集まってる。どいつもこいつも武器を持ってる。いったい何が始まってるんだ?」
ヒュンがキュンの頬を叩いた。
クロエがキュンの頬を叩いた。
「何しやがる」キュンが叫んだ。
ヒュンとクロエとキュンの前に、ネロエの影が浮かび上がった。
「わたしはネロエ」とネロエが言った。「邪悪な黒い力は民衆を扇動して、わたしから力を奪おうとしています。味方はわずかで、城門が破られるのは時間の問題です。聖なる泉の水の貯えは絶え、わたしはもう自分の影しか飛ばすことができません。あの水さえあれば暴徒どもを残らず地の果てに飛ばすことができるのに。急いでください。わたしは城の塔にいます。時間はもう、残されていないのです」
ヒュンが城の塔を見上げた。ネロエがヒュンに手を振っていた。
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