2014年5月31日土曜日

ウルフ・オブ・ウォールストリート

ウルフ・オブ・ウォールストリート
The Wolf of Wall Street
2013年 アメリカ 179分
監督:マーティン・スコセッシ

22歳でウォールストリートに職を得たジョーダン・ベルフォートは上司マーク・ハンナの実際的な指導を得て株式ブローカーの資格を取るが、同時にブラックマンデーが起こって勤めていた会社がつぶれてしまうので、ロングアイランドでひっそりと営業しながらペニー株を扱う非合法すれすれの会社に就職して、そこでたちまちのうちに頭角を現わし、マリファナの売人を中核とする仲間とともに会社を興して強引で悪辣な手段で金を稼ぎ、たちまちのうちに証券取引委員会、FBIの注目を浴び、露骨なインサイダー取引や露骨なマネーロンダリングでいよいよ危なくなってくると司法取引に応じて引退を決め、自分に忠誠を誓った社員の前で引退の演説をしているうちに引退は誤りであったと考えを変えて司法の総攻撃にさらされる。
きわめて高いカリスマと異様な営業能力を備えたジョーダン・ベルフォートがレオナルド・ディカプリオ、その相棒がジョナ・ヒル、すぐに退場するマーク・ハンナがマシュー・マコノヒー、ジョーダン・ベルフォートの弁護士がジョン・ファヴロー。
冒頭、新人のディカプリオに奥義を伝授するマシュー・マコノヒーの存在感は見ているだけで楽しいが、ディカプリオ自身も微妙に形態模写的な演技から飛び出してものすごい芝居を披露している。『アビエイター』もそうだったけど、スコセッシが妄執から引き出された一種の狂乱をディカプリオに託すとディカプリオは非常にいい仕事をするような気がする。
ジョーダン・ベルフォートの会社というのは会社というよりも金とセックスとドラッグを信仰するカルトのようなもので、これは演出だと思うけれどオフィスは異様な人口密度を誇り、調べてみると創作ではないようだけど、恐ろしいどんちゃん騒ぎを連日のようにおこなっていて、地上のなによりもどんちゃん騒ぎを嫌うわたしは相当な恐怖を感じていたが、学生に毛の生えたような連中がこのような環境にいたのだとすれば、それはまあ、楽しいに違いない。スコセッシの演出はかなりざっくりとしているが、ユーモアをまぶしながらこの異様な世界と異様な精神状態をかっちりと描き込んで3時間の上映時間を飽きさせない。


Tetsuya Sato