2014年5月10日土曜日

スズメバチ

スズメバチ
Nid de guepes
2002年 アメリカ 113分
監督:フローラン・エミリオ・シリ

ドイツ国境に近いストラスブール。高速道路のすぐ脇に家電の倉庫がある。まずこの倉庫で夜警をしている男がバイクに乗って出勤する。ポケットには拳銃を忍ばせ、なぜかバイオリンのケースを抱えている。元は消防士で、辞めたことには何か理由があるらしいが語らない。そしてその工場へ接近していくトラックがある。乗っているのは無軌道な若者が5人ほど。夜陰に乗じて倉庫に忍び込んで盗みを働こうと企んでいる。それから高速を進む護送コンボイがある。警官を乗せたバイクとミニバンが装甲車を囲み、装甲車の中には完全武装の警官たちが乗り込んでアルバニア・マフィアのドンを見張っている。欧州の共同捜査網によって逮捕された極悪人で女性の敵でもあるこの男は、ストラスブールで開かれる裁判で裁かれることになっていた。夜警は倉庫に到着し、同僚がゲームに興じる脇でバイオリンを弾き始める。盗賊のトラックは倉庫街に走り込み、若者たちは携帯電話の基地局を壊し、監視カメラを迂回して目標の倉庫に乗り込んでいく。護送コンボイはドン奪回を企むアルバニア・マフィアの強力な火力に遭遇し、ただ一台残った装甲車が脱出口を求めて倉庫街へ迷い込む。
というわけで泥棒、警官、警備員がここでひとつの倉庫に集合し、ドンを求めて押し寄せるアルバニア・マフィアの大群と戦うことになるのである。簡単なストーリーだけ聞いて野放図でモダンなアクション映画かと思ったていたら、涙と友情と自己犠牲という重苦しい展開が用意がされていて、その古めかしさに驚いた。孤立状況の作り方や押し寄せてくるマフィアの描き方、西部劇からの唐突な引用などから考えると、元ネタになっているのはジョン・カーペンターの『要塞警察』であろう。その元ネタよりもだいぶ話を広げた分、要領が悪くなってまとめるのに苦労しているように見える。設定も人物関係も決めるだけ決めて投げ出してしまったようなところが多いような気がしたが、さしあたりの破綻はどうにか回避されている。


Tetsuya Sato