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「骨盤が震えていた」と所長が言った。「大宇宙の偉大な力が、わたしの骨盤を激しく震わせていた。背筋を這い上がる振動の大きさから、終局が近づいている、とわたしは悟った。そしてそれを裏付ける報告を狩人たちが持ち帰った。険しい山で、霧に濡れた岩肌を駆けて、命を賭けて、俊敏な羚羊を追うことに慣れた狩人たちは、町の家並みを屋根から屋根へと自在に伝って、その卓越した視力を駆使して眼下で起こる一切を認め、異変を確実に読み取った。町はずれの兵営の庭にギュンとピュンがいるという。しかもヒュンまでいるという。知らせを受け取ったとき、わたしはわたしの所管で発生した損害の概算を算定しようとしていたが、ただちに仕事を投げ捨てて外へ飛び出した。飛び出したとたんに黒い棍棒を持った男たちが群がってきた。わたしはわたしの権威に訴えて道を開けるように要求したが、男たちは要求を受け入れる代わりに棍棒を振り上げて襲ってきた。囲まれていたので逃げ場はなかった。だがわたしには大宇宙の偉大な力がついていた。一瞬のうちに、まさしく一瞬のうちに、わたしの肛門から強力な武器を備えた腕が飛び出し、青白い光で強制徴募隊を焼いていった。機械の腕がもとの場所に収まると、わたしは兵営を目指して走り始めた」
Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
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