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ヒュンはクロエとキュンとともに街道を南へ進んで大きな町にたどり着いた。
「ここはなんだか、見覚えがあるな」とヒュンが言った。
「あんた、ここで王様をやってたろ」とキュンが言った。
「あんたがあたしを捨てたところよ」とクロエが言った。
「で、ロボットに拾われたんだよな」とキュンが言った。
クロエがキュンの頬を叩いた。
キュンがクロエの頬を叩いた。
ヒュンがキュンの頬を叩いた。
「勝手に手を出すんじゃねえ」とヒュンが言った。
「先に叩いたのは俺じゃねえ」とキュンが言った。
「何度でも叩いてやるからね」とクロエが言った。
「なあ」キュンが町の広場を指差した。「様子が変だ。兵隊が集まってる。いったい何が始まってるんだ?」
ヒュンがキュンの頬を叩いた。
クロエがキュンの頬を叩いた。
「何しやがる」キュンが叫んだ。
広場にいた兵隊や市民がヒュンのまわりに集まってきた。王様だ、とつぶやく声が聞こえた。王様が戻ってきた、とつぶやく声が聞こえた。つぶやきはすぐにさざなみになり、さざなみがさらに多くの者を引き寄せた。
台の上に予言者が立った。聞けっと叫んで唾を飛ばした。
「王国が存亡の危機を迎えている。だが案ずるな。いまここに伝説の勇者が訪れた。我らを窮地から救うために、邪悪なドラゴンを倒したあの勇者が、我らの王が帰ってきた」
王様万歳、と予言者が叫んだ。王様万歳、と市民が叫んだ。
Copyright c2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
「ここはなんだか、見覚えがあるな」とヒュンが言った。
「あんた、ここで王様をやってたろ」とキュンが言った。
「あんたがあたしを捨てたところよ」とクロエが言った。
「で、ロボットに拾われたんだよな」とキュンが言った。
クロエがキュンの頬を叩いた。
キュンがクロエの頬を叩いた。
ヒュンがキュンの頬を叩いた。
「勝手に手を出すんじゃねえ」とヒュンが言った。
「先に叩いたのは俺じゃねえ」とキュンが言った。
「何度でも叩いてやるからね」とクロエが言った。
「なあ」キュンが町の広場を指差した。「様子が変だ。兵隊が集まってる。いったい何が始まってるんだ?」
ヒュンがキュンの頬を叩いた。
クロエがキュンの頬を叩いた。
「何しやがる」キュンが叫んだ。
広場にいた兵隊や市民がヒュンのまわりに集まってきた。王様だ、とつぶやく声が聞こえた。王様が戻ってきた、とつぶやく声が聞こえた。つぶやきはすぐにさざなみになり、さざなみがさらに多くの者を引き寄せた。
台の上に予言者が立った。聞けっと叫んで唾を飛ばした。
「王国が存亡の危機を迎えている。だが案ずるな。いまここに伝説の勇者が訪れた。我らを窮地から救うために、邪悪なドラゴンを倒したあの勇者が、我らの王が帰ってきた」
王様万歳、と予言者が叫んだ。王様万歳、と市民が叫んだ。
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