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運命に招かれて、ネロエの声と影に導かれて、ヒュンの新たな旅が始まった。物語を完成させる旅が始まった。旅が終わりに達したとき、物語は完成する。疑いを抱く理由はない。かけらほどの理由もない。では、旅はどこで終わるのか。どこでどのように終わるのか。過剰な飲酒のせいでヒュンは肝臓に問題を抱えていた。遺伝的に高脂血症に陥りやすい傾向があり、動脈硬化の危険が常に指摘されていた。いまここで、この瞬間に、ヒュンは小さな血栓が原因で死ぬかもしれない。だとすれば、ヒュンの物語はそこで終わる。ヒュンの背後を進むクロエがいきなりショットガンの引き金を引くかもしれない。そうなれば、ヒュンの物語はそこで終わる。なぜヒュンの背後でショットガンを構えていたのか、なぜショットガンの引き金を引いたのか、クロエは自問するだろう。たとえどのような答えを得ても、クロエの心が晴れることはないだろう。そして偽りの涙がクロエの目からこぼれるだろう。しかしそのときには、物語はすでに終わっている。もちろん、どうしても何かが起こらなければならないというわけではない。ただ旅立ちを見送って幕を引いて、続編への期待を託して終わらせることも不可能ではない。そのような種類の誘惑と戦うのは、それほど楽な仕事ではない。
Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
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