2014年6月27日金曜日

THE ICEMAN 氷の処刑人

THE ICEMAN 氷の処刑人
The Iceman
2012年 アメリカ 106分
監督:アリエル・ヴロメン

1964年、ポルノのダビングを仕事にしているリチャード・ククリンスキーはディズニー映画のダビングをしていると嘘をついて美貌のデボラをデートに誘い、まじめなおつきあいのあとで結婚して、よい夫になり、娘が生まれるとよい父親になり、妻子に愛情を注ぎながら家をグレードアップし、郊外に戸建ての家を買い、娘たちは私立の学校に通わせ、娘の誕生日には詩を朗読し、もちろん妻にはプレゼントも忘れない、という具合にとにかく家族を大事にしていたが、おそらく天性の殺人者で、おそらくは自覚として一種の異常者で、おそらくは本性に逆らってただもう愛のために意志の力で家庭人を演じながら、60年代から80年代まで殺し屋稼業を淡々と続けて100人も殺した、という実話の映画化。
主演がマイケル・シャノンで、たいへんな力演をしているし、このひとのキャラクターがあって映画が成立しているようなところもある。妻がウィノナ・ライダー、殺し屋稼業の相棒がクリス・エバンズ、ククリンスキーに最初にかかわるブルックリンのギャングのボスがレイ・リオッタ、マフィアのボスがロバート・ダヴィ、ほぼ殺されるだけの役でジェームズ・フランコ、ククリンスキーの弟役でちょっと顔を出すのがスティーブン・ドーフ、というけっこうなオールスター・キャストで、アリエル・ヴロメンの演出はこの特異な主人公の性格を的確に際立たせながら20年近いタイムスパンを巧みに処理して無駄がない。なにしろマイケル・シャノンなので立っているだけですでに異様、という感じではあるが、非常によくできた映画だと思う。 


Tetsuya Sato