2014年6月29日日曜日

ザ・イースト

ザ・イースト
The East
2013年 アメリカ/イギリス 116分
監督:ザル・バトマングリッジ

FBIから民間の調査会社に移ったジェーンは環境テロ組織ザ・イーストへの潜入調査の任務を与えられてバックパッカーを装って反社会的な分子に接近し、接触に成功すると正体を偽って仲間に入り込み、テロ活動にも関与して被害を食い止めるために会社に状況を報告すると会社からはそれは顧客ではないのでスルーするようにと言われて疑問を抱くようになり、一方、ザ・イーストを指揮するベンジーには次第に共感を抱くようになる。 
淡々とした演出ではあるが、強度があって、緊張感が持続するタッチが好ましい。ヒロインを演じたブリット・マーリングのニュートラルな風貌が印象的で、姿が温和すぎていまひとつ元FBIに見えてこないという難点はあるものの、映画の雰囲気にはよくあっている。エレン・ペイジがテロリストの役ですっぴん同然のふてくされた様子で現われて、これにはちょっと驚いたが、さすがに見ごたえはある。調査会社のトップを演じたパトリシア・クラークソンの怪物じみた演技も面白い。
登場するテロ組織については、その性格があまりにもナイーブで、そのせいでリアリズムを感じにくい。ただ、これを超えて過激になると身も蓋もないことになるのであろう。テロの標的に製薬会社や製鋼会社が登場するが、あの有害ぶりからするとテロの対象になる前に集団訴訟の対象になっているような気がした。テロ組織が背負っているナイーブさはおそらくこの映画自体が背負っているナイーブさなのではないかと理解している。というわけでいくらか首をかしげないでもないものの、良心的に作られたよい映画だと思う。 


Tetsuya Sato