300: Rise of an Empire
2014年 アメリカ 103分
監督:ノーム・ムーロ
イオニアにおける反乱に加担したから、ではなくて、自由を謳歌しているから、という理由でダレイオスはペルシア勢を率いてマラトンに上陸、ギリシア勢に対して数では圧倒的な有利に立っていたが、アテナイ勢の指揮官テミストクレスは果敢な攻撃に出てペルシア勢を壊滅に導くとダレイオスを狙って自ら矢を放ち、テミストクレスの矢を受けたダレイオスは息子クセルクセスを死の床に呼んでギリシアとの争いを禁じるが、ダレイオスの右腕としてペルシア海軍を預かるアルテミシアは個人的な復讐心からギリシアの滅亡を願ってクセルクセスの心をあやつり、クセルクセスを不気味な改造人間に仕立て上げ(つまり、あれです)、アルテミシアにあやつられたクセルクセスは百万の軍を率いてギリシアに侵攻、テルモピュライの隘路に陣取ったスパルタ勢をペルシアの陸軍が攻めるあいだ、アルテミシアの海軍はエウボイアの沖でアテナイの海軍と交戦し、テミストクレスが率いるアテナイ勢は奇策を弄して緒戦を有利に戦うものの圧倒的な数量差に負けて敗退、アテナイは陥落してアテナイ勢はサラミスに再集結し、そこへアルテミシアが復讐心に猛って、というよりも、テミストクレスの食い逃げに怒って現われるので、テミストクレスはアテナイの残存兵力を率いて迎撃に出て、そこへスパルタ勢その他が援軍に駆けつける。
つまり時間的にはマラトンからアルテミシオン、テルモピュライ、サラミスまでを扱っていて、『300』のエピソードはそのなかに含まれる形になっている。対立関係はレオニダス対クセルクセスからテミストクレス対異常に強化されたアルテミシアに変わり、クセルクセスが後景に退いた分、奇形的な描写は大幅に減り、テルモピュライの周囲に余計なものを貼りつけるという構成もなくなって、説明的な部分はナレーションで飛ばしながら最初から最後までほぼ戦闘に終始している。
古代ギリシア世界の表現はあいかわらず特異で暑苦しいが、海戦の場面では衝角攻撃から白兵戦までいろいろやってくれるし、帆柱をはずした三段櫂船が海に浮かんだ箱みたい、という描写はもしかしたらなかなか貴重かもしれない(たぶんそのあたりを強調するためにアウトリグがなくなって、全通甲板が与えられて、漕ぎ手の配置が変更されている)。
エヴァ・グリーンはアルテミシアを怪演し、最後は二刀流でテミストクレスと一騎打ち。テミストクレスを演じたサリヴァン・ステイプルトンが微妙にテミストクレスに似ているところが面白い(エンドロールからするとテミストクレスの横にいたのはどうもアイスキュロスだったみたい)。悪くなかった、というのが素朴な感想になる。