Malavita/The Family
2013年 アメリカ/フランス 111分
監督:リュック・ベッソン
かつてニューヨークで町を仕切っていたジョヴァンニ・マンゾーニは察するところFBIに追いつめられてファミリーを丸ごと売り飛ばして、名前を変えて妻と娘と息子を連れてFBIの証人保護プログラムでノルマンディーの小さな町へ越してきて、そこで目立たず騒がずに地元に馴染もうと試みるが、そもそも心の狭いノルマンディーの田舎町なので、アメリカ人と見れば「44年に上陸してきたからって偉そうに」というような陰口が流れ、インテリぶった隣人も友好的な顔で近づいてきて妙な具合に揚げ足を取り、そういう具合なので本質的には善良で気持ちのいいこの一家も実は道に迷っているせいで凶暴無比であったので、気に入らないことがあればたぢどころに暴力に訴えて、ときおり恐ろしいことを始めるものの、それでも小市民の鉄面皮な仮面をかぶってがんばっていると、ひどく込み入った事情からマフィアに所在がばれて殺し屋の一団が送られてくる。
ジョヴァンニ・マンゾーニがロバート・デ・ニーロ、その妻がミシェル・ファイファー、監視役のFBIがトミー・リー・ジョーンズ。一家の子供たちも含めて、出演者はみなすばらしい仕事をしていると思う。壮絶に血なまぐさいにもかかわらず、日常的なほほえましいスケッチをふんだんに織り込んだ「ファミリー映画」になっていて、ゆるめに作られた部分がいきなり暴力性へと収斂していく唐突さがものすごいし、二つの軸がキャラクターの強固な自我を媒介に緊密にねじり合わされていく手口がまたすごい。リュック・ベッソンのタッチはまったく奔放で油断できない。
Tetsuya Sato