Sucker
2013年 アメリカ 81分
監督:マイケル・マナッセリ
原子力関係の研究所に勤めるジム・クロウリーは昇進の機会を奪われた上に解雇され、解雇されたということで社員専用の駐車場にとめておいた車をレッカー移動されて取り戻せなくなり、しかたなしに歩いて帰る途中で妻の浮気の現場を目撃し、ついでに雨も降り始め、絶望の底に突き落とされて走る車の前に身を投げ出したところ親切なドライバーに救われて、いいところへ行こうと誘われてバーに連れ込まれてそこで一杯二杯とウィスキーを飲まされ、とうとう酔いつぶれると親切なドライバーはジム・クロウリーの自分の研究所へ連れ帰って縛り上げ、自分が開発した血清を注射して実験室に放り込み、その血清というのが蚊が媒介する新種の病原体に対抗するものであったので、実験室に解き放たれた蚊の大群がジム・クロウリーに襲いかかるとジム・クロウリーは見る間に絶命し、実験の失敗を悟った科学者はジム・クロウリーの死体を路地裏に捨て、そこで再び蚊に接触してよみがえったジム・クロウリーはすでに人間の姿を捨てた怪物と成り果てていて、それでも心はそのままであったので、まず研究所で自分に好意を寄せてくれた女性イブリンが暴漢に襲われているところへ現われて暴漢から血を抜き取り、家に帰って浮気をした妻から血を抜き取り、研究所を訪れて車を取り上げた警備員から血を抜き取り、そういうことをしているうちに警察もどうやら人知を超越した怪物が暴れているらしい、ということに気がついて、ジム・クロウリーを当の姿に変えた科学者を顧問に招き、イブリンも加えてジム・クロウリーを追いかける。
こじんまりとしたプロットもステレオタイプの登場人物も1950年代B級SFそのまんま、という雰囲気で、残酷描写などは控えめにして、いまどき珍しいリアプロジェクションも使って往年のスタイルにしたがいながら楽しい映画を作ろうと一生懸命頑張っていて、そこがなんとも好ましいし、それでも馴れ合い映画には終わらせないで、しっかりと演出が入っているから時間をきっちりと使ってだれ場がない。いまさら、というところはどうしても否定できないものの、やはりこういうのを見るとこちらは素朴にうれしさを感じずにはいられない。研究所の所長の役がなぜかロイド・カウフマンで、なぜかロイド・カウフマン、というところはわからなくもないけれど、トロマよりもよほどに上手な映画なのでロイド・カウフマンである必要は全然なかったと思う。
Tetsuya Sato