2013年5月31日金曜日

アマルフィ 女神の報酬

アマルフィ 女神の報酬
2009年 日本 125分
監督:西谷弘

テロ対策を専門とする外交官黒田康作がテロの予告を受けてローマに現われ、そこで日本人観光客の娘が誘拐される事件にかかわると、誘拐犯が実はテロを計画していたという、ひとつ間違えばすべてがすれ違っていたであろう危ういプロットが怖かった。
驚きはローマやアマルフィの風景にまったく魅力がないことで、どちらもテレビドラマに出てくる東京のようにぺったりとしていた。よほどの短期間のロケだったのでフレームをまともに決めている時間がなかったか、そもそも風景にまったく興味がなかったか、それともその両方なのかはわからないが、BSでやっているイタリアののどかな村の番組のほうがよほどきれいに撮れているのではないだろうか。
ただ、それはそれとしても空間的に広がりのあるドラマを作ろうという野心は見えたし、そのモチベーション自体は好ましいと思うので、あとはそれをテレビの二時間ドラマからいかにして映画に格上げするかであろう(ショットが長い、何かと言えば間を取りたがる、意味のない会話で時間を取る、感情表現が目に見えないといけないと思い込んでいる、結局のところでたらめに見える、といったどこかのアサイラムが染まっているような悪癖とはそろそろ決別したほうがいいと思う)。女性(特に天海祐希)を事実上の無能力者として扱おうとする視点が気に障った。いまどき、あれはないのではないか。


Tetsuya Sato